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「ごちそうさま。今日も美味しかった!」 山吹家の夕ご飯。 豪勢なご馳走が、次々と平らげられていく。主に巨漢のお父さんによってだけど……。 本当に美味しかった。一口食べただけで、自然と笑みがこぼれおちる。 綺麗で、優しくて、そして、とってもお料理が上手。 わたしは、そんなお母さんが大好き。 三人ぽっちの家族だけど、この料理の腕前のおかげか、食卓はいつも賑やかだった。 何度かダイエットに挑戦してことごとく失敗したお父さんも、お母さんの料理が一番の大敵だと笑っていた。 好きこそものの上手なれ。 楽しそうに調理するお母さんを見て育ったわたしは、それ以外のお手伝いで助ける方法を選んだ。 おかげで裁縫の腕なんかは、見る見る上達していった。 でも、たまには―――― 食後のお祈りを済ませて、後片付けを手伝おうとする。 そんなわたしの申し出を、お母さんは優しく断った。 「色々としなきゃいけないことあるんでしょ。ここはまかせなさい」 「うん。ありがとう、おかあさん」 もう一言言えば、きっとわかってくれる。 でも、その先を口にするのがなんとなく躊躇われて素直に従った。 パタパタと階段を駆け上がって自室に戻る。 大好きなお母さん。唯一欠点があるとすれば――――過保護、なのかな? 最近は、後片付けどころか、その他の家事もみんな一人でやってしまう。頼りにされていないのが、少し寂しいと思った。 わたしの夢を応援してくれているから。それがわかるから、口にはできなかった。 気を取り直して机に向かった。 朝早く起きて犬のお散歩。勉強の予習。 学校から帰ったら、みんなと一緒にダンスのレッスン。 帰ったら動物病院のお手伝い。机の上では学べない、実践的な知識を身に付けるために。 お風呂に入ってご飯を食べたら、後は勉強の復習。残った時間は、医学書やその他の色んな本を読んで知識を深める。 少し前からは想像もできないくらい忙しいスケジュールだけど、とても充実していた。 毎日が楽しくて、自分が活動的に変わっていくのが感じられた。 宿題と復習は終わり。後は日記を書いてから眠くなるまで読書。そんな時だった。 くるっぽー、くるっぽー、くるっぽー リンクルンの着信音。メールじゃなくて電話だった。 以前は犬の鳴き声にしていたのだけど―――― 動物病院のお手伝いが増えてからは、鳩やふくろうなんかの声に切り替えた。 まぎれちゃって、気が付かないことが多かったから……。 えっ? そもそも動物の声にしなきゃいいって? 好きなんだから仕方ないの……。 美希ちゃんかな? ラブちゃんかな? 表示されていた名前は、東 せつな。 せつなちゃんからかけてきてくれることは久しぶりだった。嬉しくなって、急いで通話ボタンを押した。 「こんばんは。うん、大丈夫、まだ起きてたよ。明日? うん空いてる、楽しみにしてるね!」 おやすみなさい、そう言って電話を切った。珍しく興奮気味なせつなちゃんの様子に、わたしの気持ちも自然と弾む。 明日は建国記念日で学校はお休み。ラブとクッキーを焼くんだけど、良かったら一緒にやろうって。 でも、クッキーなんて……。 学校の家庭科の時間を思い出す。 香ばしいを通り越して、焦げ臭い香り。クマにしか見えない真っ黒なパンダさん……。 なんとかなるよね! 読みかけた本を置いて、さっそく作業に取り掛かる。 みんなで作るなら、持っている型だけじゃ寂しいと思ったから。 薄いアルミの板をハサミで切って形を整えていく。次々に新しいデザインの枠が形作られていった。 「ふ~ん、美希ちゃんはラブちゃんから連絡もらったのね」 「そうよ。今日はなんだか楽しそうじゃない? ブッキー」 「だって、せつなちゃんから電話してくれるなんて珍しいし」 「そうなの?」 「えっ?」 「あ、ううん、なんでもない。楽しい一日にしましょう!」 先に美希ちゃんの家に寄ってから、並んでラブちゃんの家に向かって歩き出した。 バラバラに押しかけるのは、返って気を使わせると思ったから。 「いらっしゃい! 美希、ブッキー」 「「おじゃましま~す」」 ノックしたら、すぐにせつなちゃんが扉を開けて出迎えてくれた。 扉の前で待ってたんじゃないかと思うくらいのタイミングだった。 せつなちゃんの凛々しい顔立ちがほころぶ。笑顔でやわらかくほどける。 その嬉しそうな表情は、訪れたわたしたちとって何よりの歓迎だった。 「美希たん、ブッキー、せつな~。材料の準備済んだよ!」 「楽しみね、せつなちゃん」 「ええ、精一杯がんばるわ」 「せつなは頑張りすぎよ。クッキーなんて気楽に焼けばいいの」 「そういう美希が、一番ムキになったりするのよね」 「失礼ね! アタシはお菓子作りくらい簡単に」 「この前、タマネギで泣いてたクセに」 「そう言えば、タマネギをアタシに回したのはせつなだったような」 「美希は澄ました顔より、泣き顔の方が可愛いわよ」 「やっぱり……わざとだったのね!」 「はいはい、喧嘩はそのくらいにして始めようよ」 ふざけあってる美希ちゃんとせつなちゃんが、ちょっとだけうらやましかった。 始めはギスギスしていた二人だけど、似たもの同士なのか気が合うらしく、よくじゃれ合っている。 普段なら混じることができるのに、苦手意識で気後れしてしまう。 調理が始まった。 泡立て器を握ったラブちゃんの手が、ボウルの中で軽やかに舞う。 トロッと溶けた黄色いバターが、鮮やかな手付きで混ぜられてクリーム状になっていく。 普段はとても器用とは思えないのに、どうしてお料理となるとこんなに人が変わるのだろうと思う。 「ブッキー、卵を割って溶いてくれる?」 「うん、わかった」 ボウルの角で卵を割る。割れた卵の中身は、ボウルの外に落ちた……。 「ごめんなさい、手が滑っちゃって。次はちゃんとやるね」 今度は慎重に、ボウルの中の面に叩きつける。ガシャって音と共に、砕けた殻が中身に混ざる……。 「ブッキー、大丈夫?」 「う、うん、すぐに取れるから」 なんとなく察しているラブちゃんと美希ちゃん。二人にバレてるのはわかってる。今さら恥ずかしいとも思わない。 でも、せつなちゃんは知らないみたいだった。カッコ悪いところを見られたくなくて、必死で誤魔化した。 動揺を悟られたくなくて、急いでラブちゃんの泡立てたバターの中に流し込む。 「あぁ! 一気に入れちゃダメ~!」 「えっ? ええっ?」 止めようとするラブちゃんの手と、自分の手がぶつかり合う。 バランスを崩して両方のボウルごとひっくり返してしまった。 「ごめんなさい……」 「平気だよ! 材料多目に用意してるし、始めからやり直そう」 卵とバターでベッチャベチャ。暗澹たる気持ちでお掃除に取りかかった。 せつなちゃんが手伝いながら問いかけてきた。 「もしかして、ブッキーってお料理苦手なの?」 「そうなの……。黙っててごめんなさい」 「気にしなくていいわ。一つくらい苦手なものがあったほうが付き合いやすいもの」 「そこで、どうしてせつなはアタシを見ながら言うのよ……」 「別に? あっ、美希のお鼻に薄力粉が――――」 「えっ? やだっ!」 「今、付いたわよ」 「クッ、はめたわね。この~~!」 せつなちゃんが美希ちゃんをからかいだす。また二人の漫才が始まった。今度はラブちゃんも止めなかった。 気落ちしてるわたしを笑わせようと、みんなで気を使っているんだろう。 でも、そうやってせつなちゃんとふざけている美希ちゃんの姿すらうらやましく思えて、笑う気にはならなかった。 (料理、ちゃんと教わっておけばよかった。引っ込み思案も、やっぱり直ってないのかも……) ラブちゃんが主導で再びクッキー作りを再開する。今度はわたしは手を出そうとしなかった。 せっかくの楽しい時間を自分の失敗で台無しにするわけにはいかない。わたしは成形で役に立とうと決めた。 「ブッキー、一緒にやりましょう」 「えっ? でも、邪魔になるといけないし……」 「大丈夫、肩に力が入りすぎてるだけよ」 せつなちゃんがわたしの手の上から自分の手を被せる。 時々耳にかかる吐息がくすぐったくて、自然に力が抜けていく。 溶いた卵を、三回に分けてゆっくりと混ぜていく。 チョコチップ、アーモンド、バニラエッセンスを混ぜていく。 美希ちゃんがふるいにかけた薄力粉とベーキングパウダーを少しづつ混ぜていく。 ヘラでボウルの底から掬いあげるようにして、しっかりと馴染ませた。 全ての作業は、わたしの手で行われた。 抱きつくようにして、せつなちゃんが上からわたしの両手を握って力加減をコントロールしてくれた。 苦手意識で体が硬直しているだけ。 一度感覚を身体に覚え込ませれば、わたしは必ず上達するからって。 からかうのではなく、呆れるのでもなく、真剣な表情で付き合ってくれたせつなちゃんに感謝した。 小さなことで気落ちしていた自分が恥ずかしくなる。 以前は引っ込み思案で、自分から行動することができなかった。 足りないのは自信。自分を信じること。 苦手なお料理で、そんな自分の欠点がまた出てきてしまっていた。 そんな中、せつなちゃんはわたしを信じてくれた。だから、精一杯がんばろうって思った。 後は型に入れて形を整えて、焼き上げるだけ。 わたしの本領が発揮できるパートだ。 「わっは~、かわいい! これブッキーが作ったの?」 「凄い、単純な形なのに、ちゃんと何の動物か全部わかるわ」 「さすがブッキーね。こういうの作らせたら完璧ね!」 「このまま焼いてもいいけど、どうせならちゃんと絵も描いたほうが可愛いと思うの」 型はあくまで縁取り、動物の輪郭に過ぎない。 千切った生地を棒状に丸めて立体的に仕上げていく。そして、チョコペンを使って絵も入れた。 今度は、わたしがせつなちゃんに教える番。 少ない線で動物を描くには、特徴を極端に強調すること。 飲み込みの早いせつなちゃんは、見事なデザインで作り上げていった。 「ラブちゃんが作ってるのはクマ?」 「犬のつもりなんだけど……」 「美希が作ってるのはブタね!」 「失礼ね! 鳥よ」 「あっ、横から見るのね。羽が鼻に見えちゃった」 みんなでお腹を抱えて笑った。 作ってる本人たちも、最初は怒っていたけど、ついには可笑しくなって―――― 上手なものは誇らしくて。 そうでないものは可笑しくて。 やっぱり、どれも楽しかった。 そして、どれも最高に美味しかった。 お腹も、そして何より、心も。 満たされた気持ちで帰路に着いた。 家の中に入ると、ちょうどお母さんが夕飯の支度を始めようとしていたところだった。 「おかえりなさい、祈里。今日は楽しかったみたいね」 「えっ? まだ何も話してないのに」 「嬉しそうな顔を見たらわかるわよ」 「あのね! おかあさん」 「どうしたの? 急に真剣な顔して?」 「わたしも、おかあさんみたいにお料理が上手になりたい!」 思い切って口にする。お母さんの気持ちはわかってる。 どんなに忙しい時も、お父さんの食事も、わたしの食事も手を抜くことなく作ってきた。 それがお母さんの誇りであることもわかっていた。 でも、わたしもお母さんのような女性になりたいと思ったから―――― 「嬉しいわ。じゃあ、今晩から一緒に作りましょうか?」 「うん!」 お母さんは、少し驚いた表情の後、ニッコリと笑ってそう言った。 その夜から、山吹家の食卓には不恰好な料理がいくつか並ぶようになった。 以前にもまして――――弾む会話と共に。
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(アタシって、お節介?) ドーナツを口にくわえて、そんなことを考える。 世話焼きと言うよりは、やはりお節介なのではないかと思う。 それは、ずっと頼られることが多かったためかもしれない。 けれど、それを嫌だと思うことは無かったし、むしろ人に必要とされているようで嬉しかった。 だから最近、美希はちょっと手持無沙汰。 (まあ、ママはね……) 母はあんな人だけれど一応自立している女性なので、元々そんなに頼られっぱなしなわけではない。 離婚後からは特に、対等の女友達の様に助け合って生きている。 問題は、手のかかりっぱなしだった弟。 彼は受験で忙しくなってしまったのか、月に一度父との面会で一緒に会うくらい。 けれど、体の調子は良いらしいし、学校も楽しく通っているようなので、特に問題はない。 何かと手のかかる親友その一のラブ。 彼女もまた、高校に進学したと同時にプロを目指すため、更にダンス漬けの生活となり、以前の様に頻繁に会うことができなくなった。 (まあ、毎日会えなくなっただけで、週に2~3度は会うけどね) そんなわけで、美希に残されたのは、何かと手のかかる親友その二の祈里だけ。 (ちなみに親友その三のせつなは、元々そんなに手がかからないので除く……) だから、最近彼女の事が……。祈里の事が特別に気になってしまうのは、仕方がないことだと思っていた。 「美希ちゃ~ん」 ドーナツカフェで美希が宿題をしていると、祈里が情けない声を出しながらやってきた。 学校でなにかあったのだろうか。 表情からして、切ないと言うよりは困っているみたいだ。 「どうしたの、困りごと?」 美希の顔を見ただけで、少し安心してしまったのか、祈里はホウっと笑顔でため息をついた。 「ウン。あのね……」 祈里は対面の席に腰を下ろし、大きめ鞄を隣の椅子に置く。 そして、学校で起こった“困りごと”の相談を始めた。 「へぇ、ブッキーがお姫様役ね……。ピッタリじゃない」 今度の学園祭のクラスの出し物。 くじ引きで、“体育館のステージで、一般客のための劇をする”が、当たってしまったらしい。 “眠り姫”を公演することが、毎年の恒例になっているらしい。 そして、祈里はその栄えある“眠り姫役”に大抜擢された様なのだ。 「身長が一番低いからって理由、納得できないよ」 祈里の通う高校は私立白詰草女子学院高等部。 女の子だらけの劇で、男役、女役を分かりやすくするためには、身長の一番低い子がお姫様。一番高い子が王子様。 そんな感じでクラスメートたちに言い包められてしまったようだ。 「大丈夫よ! 前半だけ頑張れば、後は眠っていれば良いだけじゃない」 「でも私、自信ないよぉ……」 励ましてみたけれど、祈里の気分は全く上向きにはならない。 少し不貞腐れているけれど彼女の性格上多分、断ることはできないだろう。 「ダンス大会でたくさんの人の前で踊ったじゃない」 あの時の度胸があれば、今更劇の一つや二つ、恥ずかしがることではないように思える。 「だって、あの時はみんな一緒だったし……。でも、今回はセリフとかもあるし……」 祈里は自信なさ気に下を向く。 髪と同じ栗色のまつ毛が日に透けて金色に輝いた。 「セリフは完璧にマスターできるように、アタシが練習付き合ってあげるから!」 美希はそんな祈里についウットリ見惚れながら、そう励ます。すると、 「本当?」 ぱあっ、と祈里の表情が輝いた。 (あ、あれ?) その顔を見て、何故だか鼓動が速くなる。 (……何でドキドキするのかしら?) 確かに今ちょっと「ブッキー、綺麗になったな」とは思ったけれど、ドキドキするのはちょっと違うような気がする。 ちょっと「あの柔らかそうな髪に触れてみたいな」とか「薄桃に染まる頬をぷにぷにしたいな」とか……。 (なんか……違う気がする) まるでこれでは――――。 「美希ちゃん?」 いつの間にか一人で悶々と考え込んでいた美希の事を、祈里が不思議そうに見る。 「あ! あぁ、ゴメン。何でもないの。それが台本なの?」 美希は慌てて、祈里の持っている綴られた紙を指差した。 「ウン。じゃあ、ここのページから始めてもらっていい?」 少しやる気が出てきたらしい祈里が、マーカーで印の付けられている前の行を指差す。美希は気を取り直し、 「ええ。じゃあ読むわね」 と言って、台本をゆっくりと読み始めた。 * 突然鳴りだすベルで目を覚ます。 (……朝) 祈里の劇の練習に付き合いだして二週間。 何やら胸の奥底にモヤモヤとした、認めることのできない気持ちが渦巻いていて、ここの所よく眠ることができない。 いつもは目覚ましが鳴りだす前に起きることができるのに、今日はジリジリとしつこく鳴り響く音に、やっとのことで起こされた。 カーテンの隙間の向こうは、まだ真っ暗。 美希はパジャマからトレーニングウエアに着替える。 洗顔を済まし、キリリと気を引き締めるように髪の毛を後ろで束ねた。 毎朝欠かさないランニング。 走ると考え事がグルグル頭の中を巡る。 もちろんそれは勉強のことだったり、仕事の事だったり。 走りながら考えることで、自分の中で整理がつき、解決することがほとんどだ。 美希があまり人に頼らないのは、こうやって、自分の事をきちんと良く考えて、自分で解決することができるからだろう。 吐く息は白く、寒さで身も引き締まる。 筋肉をほぐすため、まずはゆっくりと走った。 (どうしよう。アタシおかしくなっちゃったかも……) 最近走りながら考えることは“その事”ばかり。 得意なはずの自己解決も、“その事”についてはなぜか結論を出すことができなかった。 油断していると、ふわっとした栗色の髪の毛が、思考の奥で揺れる。 (気の迷いなんだから!) そう、いくら自分に言い聞かせても、彼女の笑顔が頭の中から追い出すことができなかった。 (……女の子を好きになっちゃうなんて、絶対におかしいんだから!) 強く頭を振り、美希はランニングのスピードをクンっと上げる。 空が白みだし、クローバータウンストリートの街並みが、くっきりと見え始めた頃、美希の最近の悩みの種が視界の中に飛び込んできた。 「美希ちゃん、おはよー!」 祈里は待ち構えていたように、その場所に立っている。 手には子犬のリード。 もうじき退院する、患者(患犬?)の散歩をしていたのだろう。 「……おはようブッキー」 そう答えると、祈里は心配そうな顔をした。 「……元気ないね。悩み事? 最近……何か悩んでいるみたいで気になって」 祈里は近くに寄ってきて美希の背中を軽く撫でた。 「な、なに?」 「あのね、手当って言葉があるでしょう?」 美希は祈里が何を言いたいのか分からずに困惑の表情を浮かべる。 「けがや病気の処置の事なんだけどね。元々は手のひらをあてて、さするところから始まっているの」 「ブッキー……」 「私、いつも自分の事ばっかりで、頼ってばっかりで……。美希ちゃんみたいに理解力とかないから」 だから、せめて少しでも「癒せるかな?」と思ってと、祈里はエヘヘと笑う。 「ごめん。心配かけちゃって。ありがとう、すごく癒されたわ!」 美希は情けない気持ちでいっぱいになった。 自分の事ばかりになっていたのはこちらのほうだ。悶々と悩んでいて、知らず知らずのうち祈里に心配をかけてしまっていたのだろう。 祈里はそんな美希の様子に気づいて心配してくれていたのだ。 今朝だって、気になって散歩の途中で、美希に会うために待ってくれていたに違いない。 (……もうだめだ) ――――――――好きだって認めよう。 (アタシは女の子だけど) 祈里も女の子なのだけど……。 彼女が可愛らしくて、健気で、愛おしく思えてしまうこの感情は、口に出してしまわなければ、誰にも迷惑は掛からない。 美希は持ち前のモデルの演技力で力強い笑顔を作り、祈里の頭を優しくお姉さんの様に撫でた。そして、 「今日は仕事がお休みだから、放課後ドーナツカフェで、みっちり劇のセリフの練習に付き合うわね!」 そう言うと、祈里は嬉しそうに微笑み返して来た。 * 眠り姫役は、さほど難しいセリフはない。 しかも物語の後半は、むしろ王子役の方が活躍するような台本になっていた。 祈里は思っていた以上にスムーズにセリフを覚えてしまい、それに付き合っていた美希もまた、眠り姫役以外のセリフや立ちまわりも完璧にマスターしてしまった。それほど二人は時間があるときに頻繁に会い、練習に没頭した。だから、明日に迫った学園祭も、最早一縷の不安もない様に思われた。 「……キス?」 「そうなの~!」 美希が裏かえった声で問うと、祈里はドーナツの乗ったテーブルに泣きながら突っ伏した。 どうやら劇中、クライマックスの王子とのキスシーン。 伝統で、必ず本当にキスをしなくてはならないらしい。 一般客である他校の生徒もそれを目当てにやってくる者がいるくらい、ある方面には有名な伝統らしい。 体育館で行われる劇は、一般のお客をメインにしているため、その実状を知る学園の生徒は少ない。 祈里も例外ではなく、その事実を前日になってやっと知ることになったのだ。 「それってだまし討ちってやつじゃないの?」 美希はあきれた様にそう言う。すると、 「でも、実行委員のコしか知らなかったみたい……。王子様役の子も怒っていたから、私だけが被害者ってわけでも……」 と、どこまでお人好しなのか、祈里は泣きながらもクラスメイト達をかばう発言をする。 「ブッキー……、キスしたことあるの?」 「あ、あるわけないよー! どうしよう、ファーストキスなのにぃ!!」 美希の質問に、祈里は再び狼狽えた表情で泣き出す。 「好きな人とかがいるんなら、この際奪ってもらうとか……」 そう言って、少し後悔をした。 祈里が誰か知らない男のコとキスをする所など、想像もしたくない。 「好きな男の子なんかいないよぅ!!」 祈里は更にわぁわぁと泣く。 美希はホッとするけれど、それもつかの間。 明日の本番になったら、祈里は王子役の子と本当のキスをしてしまうのだ。 お芝居だからと言って、そんなシーンは観たくなどない。 「この際、誰かいないの? お父さんとか、お母さんとか、友達とか……」 美希の提案に祈里はきょとんとした顔になり、しばし考えてから美希を指差す。 「……じゃあ、美希ちゃん」 「あ、アタシ??」 潤んだ瞳で近寄ってくる祈里の顔に、美希はゴクリと唾を飲み込んだ。 嬉しいような気もするけれど、一線を越えたらもう退きかえせなくなりそうで、後退りをする。 「だ、だめだめだめだめっ!!!!!」 祈里の唇に手のひらを押し当てて、猛烈な勢いでストップをかける。 美希の制止に、祈里も我に返ったような顔つきになり、そして、真っ赤になった。 「ご、ゴメンね。私何言っているんだろうね……」 先に謝られ、美希は頭を横に振る。 「ううん、アタシこそ、変なこと言ってゴメン。ブッキーは真剣に悩んでいるのに……」 「……」 「……」 二人の間には重い空気が流れ、暫らく沈黙が続いた。 「今まで、練習に付き合ってくれてありがとう。明日、頑張るね」 そう言って祈里は立ち上がる。 「……うん。応援してる。頑張ってね!」 美希がそう答えると、祈里は大きなカバンを揺らしながら、家の方に向かって走り出した。 その様子を、美希はどうすることもできず、ただ見送ることしかできなかった。 * 学園祭当日。 この日のためにダンスの練習を休んだラブと、ラビリンスでの仕事を休んでやって来たせつなと連れ立って、美希は重たい足取りで祈里の通う、白詰草女子学院の校門をくぐった。 体育館のプログラムの時間をみると、“眠り姫”の公演まで、まだしばらく時間がある。 「美希たん! あれ食べよーよ」 ラブが校庭に出ている屋台を回りたいと言うので、ついて行くと、思いっきり指差したのはたこ焼き屋……。 青くなって固まる横で、せつながクスクスと笑っている。 「ラブ、私、その隣のクレープって言うのが食べてみたいんだけど……」 さりげなくせつなにフォローされ、ホッと胸をなで下ろしたのもつかの間、美希の携帯がけたたましく鳴りだす。 「あ、ゴメンっ」 液晶を見ると、画面には“ブッキー”と表示されていて、美希は慌てて通話ボタンを押した。 「もしもしブッキー? どうしたの」 そう問いかけると、携帯の向こうから祈里が情けない声で言う。 『美希ちゃん、助けてぇ~!!』 「落ち着いて。どうしたの?」 『大変なことが起こったの! もう美希ちゃんしかいないの!』 祈里は慌てた様子で、捲し立てるように言う。 『とにかく、今すぐに教室の方へ来てほしいの!』 「?」 祈里からの電話は一方的に切られた。「どうかしたの?」と言う顔をしているラブとせつなの顔を、美希は困惑した表情で見る。 「ブッキー、困っているみたい」 「え? 大変ジャン! 劇のことかな?」 「早くいった方がいいんじゃない?」 「あ……、ええ。そうね」 ラブとせつなに促され、祈里の待機している教室へと急ぐ。 劇の控室になっている教室の扉をノックすると、祈里ではなく劇に出演するらしいほかの生徒たちが二人飛び出して来た。 美希を取り囲んで、メジャーであちらこちらを勝手に計測する。 「え? え?? 何???」 その様子を、ラブとせつなはポカンと口を開けてみていた。 「ウン、ウン!! 大丈夫!!」 「山吹さん! 大丈夫そうよ!!」 教室からオズオズと出てきた祈里は、既にお姫様の姿。 黄色のサテンのドレス、フワフワのレースがスカート全体を覆い、いかにも“お姫様!”という王道スタイル。 美希は自分の置かれる状況に戸惑いながらも、ついウットリと見惚れた。 (か、かわいい……) 「美希ちゃん、ゴメン……。たすけてぇ……」 祈里は大きな目を潤ませて、心底困った顔をしている。 「ブッキー、どぉしたの? なんかあったの?」 傍らでラブが、いつの間にか購入していたらしいクレープを頬張りながら、どこかノンキにそう問いかけた。 「ごめんね、山吹さんは我慢してお姫様引き受けてくれたのに、肝心の王子様役の子が逃げたのよ!」 黒い魔女の装いで、美希をメジャーで熱心に計測していた子の一人が、少し怒ったような顔で答える。 どうやら王子役の子は、彼が劇を観に来るらしく「女の子とキスシーンはできない」と逃げ出したようだ。 「山吹さんに聞いたら、お友達が練習に付き合ってくれて、王子様役のセリフ言えるって言っていたから……」 黒い魔女の隣にいた、白い魔女の姿をした女の子が付け足す様にそう言う。 「……つまり、逃げた子の代わりに、美希が王子様をやれと言うのね?」 ラブの横で納得をしたようにせつなが言った。 「ゴメンね、美希ちゃん……」 祈里は今すぐにでも泣き出しそうだ。 美希にしてみたら、他の女の子に祈里を奪われるくらいなら……。そんな気持ちがないとも言えないので、むしろ渡りに船。 「あ、アタシで良いなら、協力するけど……」 そう答えると、教室の中からドキドキした様子で覗いていた他のクラスメートたちの表情も、パァァっと一斉に明るくなった。 「ありがとう、美希ちゃん!」 祈里は半べそ状態で、くしゃっと笑う。 たとえ恋心なんかなくても、そんな状態の祈里を見捨てることなんてできない。 美希は「当然よ!」と力強く笑ってみせる。 「わぁ~! ブッキー、美希たん頑張ってねぇ!!」 「私たちは客席で観ているわね!」 席取りのために体育館に行くと言うラブとせつなを見送って、美希は準備のために教室に入った。 「じゃあ、これと、これと、これを着てください」 王子役の衣装を渡されて、美希は迷うことなく自分の着ている服を脱ぎ始める。 「「「きゃ!」」」 何故か周りの子たちが色めき立った。 美希はモデルなので、女の子たちだけの中では割と大胆に、何も隠さずに洋服を脱ぐけれど、お嬢様の多い祈里の学校は少し事情が違ったらしい。 時間もなさそうなので、美希は構わずに王子の衣装に身を包む。それらはクラスで一番背の高い子に合わせて作られているだけあり、美希の体に驚くほどピタリとフィットした。 「「「……素敵!!!」」」 教室のあちこちから異常な視線と、感嘆とため息が聞こえてくる。 鏡の中の自分を見た。 我ながら完璧なのではないかと思うほど凛々しい王子姿だ。 「美希ちゃん、カッコイイ!!」 愛らしいこの姫のために王子になれたことに喜びを感じながら、同時に美希には一抹の不安もあった。 (アタシが王子ってことは、ブッキーとキスするってことなのよね?) 祈里はどう思っているのだろう。今は無事に劇を行えるようになった喜びで、多分そのことは彼女の頭の中から 消え去ってしまっているのだろう。祈里は何の憂いもない穏やかな表情をしている。 自分の抑えている気持ちが、起きてしまいそうで不安だ。けれど、祈里を見捨てるわけにもいかなかった。 美希の不安をよそに、劇の幕は上がる。 聞くところによると、毎年公演されているこの“眠り姫”は、近隣の高校(特に男子)には有名らしい。 体育館は一般の観客で超満員で、遠慮して公演を観ることのできない学園の生徒だけが、この伝統を知らないと言う事が何だか間抜けで、おっとりとした祈里と印象がかぶって愛らしく思える。 後半まで出番のない美希は、舞台の裾でそっと祈里を見守った。 一生懸命練習しただけあり、セリフは完璧だし、これ以上ないほどの可愛らしいお姫様っぷりだった。 そうなると気になってくるのは、観客の反応。 案の定、他校の男子生徒たちが、美希の可愛い姫に頬を染めて見入っている。 独占欲がお腹の底でメラメラと燃えるのを感じた。 (こうなったら、ブッキーに手を出せないように完璧な王子様になってやるんだから……) いくつものショーをこなしてきている美希にとって、観客が観ている舞台に立つことはさほど怖い物ではなかった。それに、女優ではないけれど、モデルにだって演技力が必要だ。自分にはそれなりの演技力があると自負がある。 出番が来て、舞台に立ち、美希は自分の才能を余すところなく発揮した。 自分で言うのもおかしいが、完璧な王子っぷり……。 観ていた女の子達のハートをガッチリキャッチした感触があった。 眠る城に潜入する。 魔法のかかった城の奥、美希の可愛い姫は本当に眠っているように見える。 触れてみたかった栗色の髪をそっと指ですく。 感じてみたかった頬の感触を、手のひらを軽く当てて味わった。 (本当に王子様だったら良かったのに……) そうだったらキスをして、姫が目覚めて、結婚をして。 二人は幸せにくらしましたとさ。めでたし、めでたし。となるのに……。 けれども実際はキスをしたら祈里は目を覚まし、劇は終了して、二人は元の親友に戻るのだ。 そっと顔を近づける。ふわりと祈里の甘い香りが鼻をくすぐる。 (アタシのあげたコロンだ……) 鼻頭が祈里の頬に触れ、その次に柔らかい唇同士がかさなった。 (ああ、終わってしまう……) ゆっくりと顔を離すと、祈里の頬がピンクに染まっているのが見えた。 瞳を開いた祈里が、美希にだけ聞こえるように、 「ありがとう、美希ちゃん」 と言って、そして、小さく微笑んだ。 * 「凄く良かったよ~!!」 「本当! 凄く素敵だったわ!」 控室になっている教室に戻るとラブとせつなが、美希たちが戻ってくるのを待ち構えていた。 「ブッキーは超可愛かったし、美希たんは超かっこよかったーー!!」 ラブのコメントは単純だったけれど、お世辞ではないと言う事が分かりやすい。 多分、他の観客たちも満足のできる公演ができたのだろう。 「美希ちゃ~ん、本当にありがとぉ~」 後ろから歩いてきた祈里が、ぺたんと床にへたり込んで泣き出した。 主役だというだけでも緊張しただろうに、トラブルが起こって、更に気を張り詰めてしまっていたのだろう。 (……多分、気づいていないわよね?) 演技中、美希は自分の感情が漏れてしまって、祈里に気づかれたらどうしようと心配していたけれど、良く考えてみたら彼女にそんな余裕なんてなかったのだろう。 それならば好都合。 美希は、自分の胸だけに、こっそりと気持ちを仕舞い込む。 (今のままでいたい) お節介な、お世話焼きの美希ちゃんの方が、祈里の傍に長くいられる気がするから。 美希は祈里のために、そして、自分のために決意する。 (今はまだ、気持ちを眠らせておこう……) いつか我慢できなくなる、その日まで――――。
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***プロローグ*** もしもお伽話の人魚姫が実在するとしたなら―――それはきっと彼女のような人なのだろう。 身近な人間の贔屓目だって人には笑われるかもしれないけど、彼女の泳ぎを見る度にそう思う。 優雅で、美しくて、彼女の起こした水しぶきまでもが真珠のように輝いて見えて。 幼い頃、その姿に心を奪われて……それからだろうか、自分が彼女を意識するようになったのは。 勿論、泳いでる姿だけが魅力的なのじゃない。 普段は頼り甲斐があって、優しくて、クールぶってる癖にちょっと抜けてて―――そんな彼女の内面も含めて…多分…自分にとっては初めての……というか現在進行形で、その……恋してる、誰よりも大切な人で……。 子供の時から、漠然とであったけれど、きっといつまでだって二人で一緒にいるのだろうな、って考えていた。人魚姫と王子様は結ばれなかったけど、自分と彼女は決して離れることはないんだろうなって。 けれど、恋は盲目とはいうものの、不満がないわけではなくて………むしろ恋をしているからこそ、不満に思うところもある。 この胸に芽生えてしまった不満……それは―――……。 ***美希SIDE*** ギラギラと照りつく夏の太陽が眩しい海辺。 砂浜は大勢の家族連れや水着姿の恋人達で賑わっていた。 「ちょ、ちょっと待って下さーい!え、えりかー!!」 「あははは、こっちこっちー!早くおいでよ、つぼみー!」 ……あのコ達も恋人同士……なのかしら。遠目でよく分からないけど、前にどこかで会ったような……。 「ふふっ……いいな。楽しそうよね、あのコ達」 あたしの隣でブッキーが少し羨ましそうに言う。 久しぶりに海に来る、って事で彼女らしくないちょっと大胆な黄色のビキニを着ているのが目に眩しい。 それ選ぶのにあたしも付き合ったのよね……あたしの着てるのもその時ブッキーが選んでくれた物だし……。 だけど、そのあたしの水着はというと……。 「……ゴメンね、ブッキー……あたしがアレ忘れちゃったばっかりに……」 暑いというのに手首まで隠れる大きめのパーカーの下に隠されていた。 それだけじゃない。 頭にはつばの広い帽子を被り、目には大き目のサングラス。口元も隠すようにタオルを巻いて。 とても海にやって来た、という格好とは思えない。 「あ、う、ううん!気にしないで、美希ちゃん!別にそういうつもりで言ったんじゃないから!」 慌てたように首を横に振るブッキー。 彼女が今日という日をどれほど楽しみにしていたか知っているあたしは(そりゃ勿論あたしだって楽しみにしてたのよ!?)、申し訳なくて溜息を漏らすばかり。 日差しを避ける為のビーチパラソルの下、あたしは恨めしげに砂浜を楽しげに駆ける少女達を眺めていた。 「―――姉さん、山吹さん、お待たせ」 両手に冷えた缶ジュースを何本か抱えた和希があたし達の元へと戻ってきた。 「あ、ありがとう、和くん」 差し出されたジュースを受け取るブッキー。だけどあたしは……。 「ありがとう、和希。だけどジュースよりもその――――」 あたしの切羽詰った声に、和希は言いにくそうに視線を逸らす。 「ごめん、姉さん……随分探したんだけど、どこも売切れだったよ……」 「あ……そ、そう……し、仕方ないわね……」 「確か来る時にコンビニがあったから、この後そこまで行ってみるよ」 和希はプルトップを開け、余程喉が渇いていたのか缶の中身を一気に飲み干す。 「そ、そこまでしなくてもいいわよ!悪いのはあたしなんだし……」 「いいから姉さん達はここで待ってて。それじゃ」 「あ!和希!ちゃんと帽子かぶって行くのよ!日射病にならないように……あと何かあったらすぐに連絡する事!」 「心配性なんだから……今日はいつもより体調もいいんだ。大丈夫だよ」 白い歯を見せて笑うと、和希はまた人波へと姿を消した。その後姿を見送りながら、あたしはまた申し訳なさから大きく溜息をつく。 なんで…なんでよりに寄ってアレを忘れてきちゃうのよ……あたしったら……絶対にバッグに入れたと思ったのに……。 あたしの落ち込んだ様子に、ブッキーが心配そうに声をかけてくる。 「美希ちゃん……大丈夫よ。元気出して。きっとどこかに売ってるはずだから―――日焼け止め」 ***祈里SIDE*** 元々、今回の海への旅行の発案者は美希ちゃんだった。 最近弟の和希くんの体の調子も良く、お医者さんからは「少し日光に当たって身体を動かすのもいいかもしれません」と言われた事がきっかけで。 「それでね…海にでも連れて行ってあげようと思うんだけど……も、もしブッキーも……その……」 頬を染めて伏し目がちにわたしを誘う美希ちゃん。 消え入りそうなその言葉に、わたしは内心ヤキモキしながら、助け舟を出す。 「―――いいわね!わたしも一緒に行きたいな。だめ?」 「ほ、ホント!?よ、良かった。じゃあ―――」 わたしとしては彼女のこういうところが……不満。 普段はビシッとしてて格好いいのに、わたしに対してだけはいつも弱気。 告白したのだってわたしからだし、照れてるからか、彼女の口からまともに愛の言葉なんか聞いた事もなくて。 もっと強気にリードしてくれたっていいのにな……。 一度でいいから……その……彼女の口から想いを告白して欲しいのに。 わたし達だけで旅行なんてって普通ならお母さんが反対するだろうけど、男の子の和くんがいる事で今回はスムーズに許可が出た。 レミさんは最後まで自分も一緒に行きたいってごねてて、「普段はあたしを置いて旅行ばっかりしてるのに」って、美希ちゃんは愚痴をこぼしてたけど。 二人きりじゃないからその……ラブちゃん達みたいにいちゃいちゃしたり出来ないのは残念だけど(ごめんね和くん)、夜は二人部屋だし……ちょっぴり邪な期待も……。 ま、まあそれはともかくとして! 折角の海への旅行、という事でわたし達ははしゃぎまくった。二人でお互いの水着を選びに行ったり、ドーナツカフェで綿密に計画を練ったり。 美希ちゃんは「せっかくの旅行なんだから完璧!にしないとね!」って凄く張り切ってた。 ―――ところが、いざ海に到着した時、彼女は重大な忘れ物をしてきた事に気がついたのだ。それは―――「日焼け止め」 「何だ、そんなことくらい」って思われるかもしれないけど、モデルさんのお仕事をやっている美希ちゃんにとってはそれはまさに死活問題。 夏真っ盛りとはいえ、雑誌では早くも秋物特集を組み始めている時期で、事に寄っては冬物の企画だってすでに動き始めてる。 美希ちゃんも夏休み中に何回か撮影を控えてるみたいで、そのどれもが秋から冬にかけてのフッションばかり。真っ黒に日焼けした健康的な―――なんてイメージは決してそぐわない物ばかりだ。 故に―――絶対に日に焼けてなどならない。 「美希ちゃん、足にもタオル掛けておかないと……焼けちゃうわ」 相変わらず落ち込んで無言の美希ちゃんの足に、そっとタオルを被せる。 「―――ブッキー……あたしの事はいいから、和希が戻ったら泳いできたら?海まで来たんだし……」 「え…?う、ううん。わたしはいいの。美希ちゃんの傍にいたいし……」 「ゴメンね……あたしのドジにつき合わせちゃって……」 今日何度目になるか分からない美希ちゃんの謝罪の言葉。けどその言葉をこれ以上聞くのは、ちょっと辛い。 わたしは返事をしないで、海へと目を向けた。仲睦まじげに泳ぐ先ほどの女の子達が見える。 「ホラホラ~!早く来ないとブラ返さないよ~!」 「ひ、ヒドいです、えりがぼがぼっ!!堪忍袋の緒がぼがぼっ!!」 ……仲睦まじくはないのかしら……。 どうやら泳いでるうちに片方の女の子の水着が流されちゃったみたいね。片手で胸押さえてるし、溺れないか心配だわ。 でも……。 「…本当に楽しそう……」 「えっ!?あれのどこが!?」 「あ、そ、そうなんだけど!……でも、ああいう事でも、きっと後で思い返してみたらいい思い出になるんじゃないかなって」 言ってしまってからあっ!と後悔して口を押さえる。わたしの不用意な言葉が更に美希ちゃんを傷つけてしまったみたい。 膝を抱えてそこに顔を埋めると、彼女は小さな声で呟いた。 「……あたしさえしっかりしてれば……」 「美希ちゃん……」 わたしは彼女の傍に寄り添い、その肩に頭を預け、目を閉じた。 「落ち込む事なんてないの……わたしは美希ちゃんとこうしてるだけで幸せなんだから……」 「ブッキー……」 「ね、言ってみて。わたしは美希ちゃんの――――何?」 ちょっぴり甘えた声で、美希ちゃんに問い掛ける。 ―――ね、美希ちゃん。言ってみて。その言葉だけでわたしはどんな事でも許してあげるから。 「ななな何って―――そそそれは……その……」 言葉に詰まり、恥かしそうに顔を赤くしてそっぽを向いてしまう美希ちゃん。―――もう……わたしの意図は伝わってるくせに……。 もどかしくなったわたしは、突き詰めるかのように更に言葉を重ねる。 「―――何?」 言いにくそうにしていた彼女も、意を決したかのように一度大きく深呼吸して、わたしの方を向き直った。 「も、勿論あたしの何より大事なこ―――――」 「―――ねえねえ、彼女たち。どこから来たの?」 「可愛いねー。中学生?にしてはそっちのパーカーの彼女は大人びてるなあ」 わたしの一番聞きたかった言葉は、突然の闖入者の声にかき消された。 顔を上げたわたし達の前には、髪の毛を染め、良く日に焼けたいかにも軽薄そうな大学生くらいの男の子が二人立っている。 「ね、良かったらサ、一緒に遊ばない?」 「折角の海なんだしさー、ヒトナツの思い出っての作ってってもいいんじゃない?」 ……もうちょっとだったのに……。 美希ちゃんはウンザリした様子だったけど、一瞬で笑顔を作って(さすがモデルさんだわ!)彼らに向けて手をひらひらと振る。 「ゴメンなさい。あたし達そういうの間に合ってますからー」 「えー、そんなつれない事言わないでさあ~。俺らも男二人で退屈してたんだ」 「俺達マジメだよ~?下心なんて全然ナシ!ちょっと遊ぶだけだからさ、ね?」 男の子達もナンパし慣れてるのか、しつこく食い下がってくる。 いつもならこういう時には和希くんが美希ちゃんの彼氏役になってくれるんだけど、コンビニまでは距離があるし、まだ戻ってくる気配はない。 ―――もう…こうなったら……。 「あの……わたし達は別に女の子二人で退屈してませんから!」 「「「え!?」」」 突然のわたしの発言に、男の子達同様に美希ちゃんも驚いたみたい。やだ……邪魔されたからってわたし……らしくなかったかしら……。 だけど一旦口を開いた以上は黙ってもいられない。 「ね?言ってあげて。だって美希ちゃんはわたしの―――――」 続きを促すように美希ちゃんののサングラスの奥を見つめる。 「わたしの……何?」 「え?まさか女の子同士で、とかないよね?」 男の子達の視線もわたしにつられたかのように美希ちゃんへと集中した。それがますます彼女を狼狽させる。 「あ、あたしはそ、その……な、なんと言うか……」 絡みつく視線を断ち切るように、美希ちゃんは思い切り大きな声で―――――。 「彼女の……こ、こ――――お、幼馴染なのよ!!!」 ……し―――――――――――ん。 ――――空気が凍りつく、ってきっとこういう事を言うんだわ………。 波が引くように一瞬の間を開けてから、男の子達はまた口を開きだした。 「そ、そうなんだ。俺達もさ、小学校の時からの知り合いで……なあ?!」 「あ、そうそう。だからさ、お似合いじゃない?ね?」 戸惑う男の子達の反応をスルーして、美希ちゃんはわたしの方をちらりと盗み見る。 欲しかった答えが得られなかったわたしは……まるでフグみたいにぷううっと頬を膨らませて……。 もう!!こんな時くらいはっきり言ってくれてもいいじゃない!! わたしの反応に慌てたのか、オロオロしながら美希ちゃんは弁解しようと言葉を繋いだ。 「あ、あのね、ブッキー、い、今のはそのなんというか……な、成り行き―――――」 「あなた達!待ちなさい!!」 けど、取り繕おうとする美希ちゃんの声は、再び新たな闖入者に寄ってかき消されたのだった。 ***美希SIDE*** 「嫌がってる女性を無理に誘うなんて、みっともないと思わないんですか!」 突然の新たな乱入者の登場に唖然とするあたし達と男の子二人組。 声の主はひょろりとした体躯を強く見せようとでもしてるのか、胸を大きく反らし、腕組みをして仁王立ちしている。 ―――でも正直迫力不足も甚だしいわ。下手したらこのナンパな男の子達の半分も体重がないんじゃないかしら。 えーと…見覚えのある眼鏡とらっきょ……もとい、特徴的なこのヘアースタイルは……ラブと同じ学校の―――なんて言ったかしら? 「け、健人くん!」 ああそうそう、御子柴健人くん。 前に皆で遊園地行ったりトレーニング施設を貸してもらったりしたのよね。―――ブッキーを船上パーティに招待したりした事も……く、嫌な思い出だわ。 それにしたってなんでこのコがここにいるのよ? 「あ?なんだお前?」 「あのさ、俺ら今忙しいんだよ。ヒーローごっこならそこらの子供とでもやってくんね?」 御子柴君の登場に一瞬怯んだものの、自分たちより明らかに格下の相手だと考えたのか、男の子達は居丈高に御子柴君へと詰め寄った。 でも、意外と言うか、御子柴君には焦った様子も怖気づいた様子も感じられない。 「ふふん。あなた達、それくらいにしておいた方がいいんじゃないですか?」 「ああ?何言って―――――」 「お、おい!ま、周り見ろよ、周り!!」 一人の男の子の言葉に、連れの子だけじゃなく、あたしたちまで周囲を見回す。 げ…な、なによこれ………。 いつの間にかあたし達のいるビーチパラソルの周りは、体格のいい何十人という黒スーツ、サングラスの男性達に包囲されていた。み、見てるだけで暑苦しいわ……。 見ているあたしとは反対に、余程訓練されているのだろうか、彼らは汗一つかかず、後ろ手に手を組んだまま、直立不動の体制で身動き一つしない。 「な…なんだよこいつら……」 男の子達も彼らの異様な風体に気圧されたのか、背中合わせになって怯えている。 「彼らは我が御子柴財閥の誇る有能なSP達ですよ……もし僕に何かしようものなら―――――」 言って御子柴君はパチン、と指を鳴らした。途端にザザッ、とファイティングポーズを取る黒服の男達。 素人目にも格闘の達人と分かる彼らの威圧感と殺気に、男の子達は「ひっ」と小さく呻くと、くるりとあたし達に背を向け、 「あ、お、俺達用事思い出しちゃったから……」 「じゃ、じゃあまたね!彼女達!!」 と言い残すと、凄いスピードで砂浜の遥か彼方まで一気に走り去ってしまった。 「ふ、口ほどにもない。大丈夫ですか、山吹さん?」 余裕の表情で手をパンパンと払う御子柴君。いや、あなた何もしてないじゃないの! 「あ、ありがとう健人くん……とSPさん達……」 「ま、まあ助かったわ…ありがとう」 「いや、お礼には及びません。実はこの海沿いに御子柴財閥がリゾート施設を建設する事になってましてね。その為に視察に来ていただけですし。―――でも良かった」 ス、とブッキ―の手をさり気なく握る御子柴君。ちょ、ちょっと何やってるのよ!ブッキー、早く振りほどいて! あたしの心の声が届かないのか、この雰囲気に流されてしまってるのか、彼女は手を取られるがままに御子柴君へと聞き返す。 「良かった……って?」 「あなたを守る事が出来たからですよ、山吹さん」 「僕の大好きな、大切な人を守る事が出来た」 その台詞に一瞬あたしの顔から血の気が引き、その後一気にカーッっと頭のてっぺんまで熱くなった。 (は、はあ!?な、何歯の浮くような事言ってるのよ!?それはあたしの台詞よ!!) けど、あまりの怒りの為か、あたしの口からは何も言葉が発せられない。 (ちょっとブッキーからも言ってあげ――――) 拒否の言葉を口にしないブッキーがもどかしくなり、彼女の横顔に合図するように強い視線を送る。でもあたしが見たのは嫌がってる様子のブッキーじゃなく。 「…………」 ―――予想に反して御子柴君の言葉に頬を赤らめ、うっとりとした目をしているブッキー……だった。 その言葉に微笑んだ御子柴君がゆっくりと手を上げると、途端に周囲の黒服軍団からパチパチパチ……という祝福の拍手が起こり始める。 どれだけ訓練されてるのよ!!!というツッコミも入れる事が出来ないまま、あたしはただ呆然とブッキーを見つめ続けた。 ***** 「姉さん、お待たせ。やっぱり日焼け止めはその―――姉さん?」 あー……誰かあたしに話しかけてるわ。誰かしら。聞き覚えのあるような声だけど……。 「姉さん?姉さんってば!?」 なんだろう、遂に幻聴まで聞こえるようになっちゃったのかしら。 無理もないわ……SPに胴上げされながらブッキーと御子柴君が仲良く去って行くような幻覚を見るくらいですもの……。 「―――――」 あ、静かになった。やだわホント……こんな格好してるから暑さにでもやられたのかしら……あたしったら……ふ…ふふふ……。 タオルに隠された口元を歪め、虚ろな笑みを浮かべるあたしの眼前に、突如、さっ、と赤い物体が差し出される。 何よこれ……赤くて丸くて足がひぃふぅみぃ……八本。なんだ、ただのタ―――――――!!!!! 「た、タコォォォ!!!???」 あまりの恐怖に意識を取り戻したあたしは、ざざざざっと一気に後ずさる。 ひぃひぃと肩で息をする涙目のあたしの前には、空気で膨らますビニール製のタコの玩具を手に苦笑いする和希の姿が。 「良かった。気がついた?ボーっとしてたからちょっとショック療法を試してみたんだけど」 「か、和希……あんたねぇ……」 怒りにワナワナと身体を震わすあたし。弟でもやっていい事と悪い事があるのよ……!! けど和希はそんな事どこ吹く風という顔で「ありがとう」とタコの玩具を横にいる持ち主らしき少女へと手渡し、あたしの横へと腰掛ける。 「―――で、何かあったの?姉さんがそんな風にボンヤリしてるなんて珍しいけど。それに山吹さんはどうしたの?」 和希のその言葉に怒りも吹き飛び、あたしは理解したくない現実へと引き戻された。 ブッキ―は……。 「……ブッキーなら知り合いの男の子に会ったから、ってちょっと出かけたわ……」 「山吹さんが?……ふーん、姉さんをおいてくなんてらしくないなあ……」 疑わしそうにあたしを見る和希。な、何よ。嘘なんかついてないわよ。 目を逸らすあたしに、和希はやれやれという風に肩をすくめた。そして思い出したかのように。 「あ、そうだ。ごめん、姉さん。やっぱり日焼け止めはコンビニにも置いてなくて……猛暑だから買う人も多いんだろうね」 「……そう……」 日焼け止めなんかもう何の意味もないわよ。だってそれが必要で、一緒に海辺で遊びたかった相手はもう―――……。 サングラスの下の目が潤む。 どうしてだろ…本当だったらこの旅行は目一杯ブッキ―と楽しむはずだったのに……。あたしのドジで台無しになっちゃったから……怒っちゃったのかな……。 いや……いやよ……ブッキー、あたしの傍にいて……。あたしを嫌いにならないで……。あたし……。 あたしはまだあなたにちゃんと伝えてない事が―――。 「あーあ、残念だなあ。姉さんの泳ぎ、僕は好きだからさ。太陽の下で見たかったんだけど」 深海のように暗く澱んだあたしの気持ちを知らないように、和希が突然暢気な事を言い出した。 「山吹さんも言ってたけど、姉さんの泳ぐ姿ってさ、お世辞抜きで本当に綺麗なんだ。覚えてる?姉さんが僕の小さい頃によく読んでくれた童話の―――『人魚姫』みたいに。」 何よ、あたしが落ち込んでるからって慰めてるつもり? 覚えてるわよ。最後、人魚姫が泡になってしまう下り、読みながら和希だけじゃなくあたしまでビービ―泣いちゃって、ママがビックリして飛んできたわよね。 「たまに思うんだよね。あの時、なんで人魚姫は届かないかもしれない想いを諦めてしまわなかったんだろうって。美しい声まで犠牲にして……」 そういうお話なんだから仕方ないじゃない。あたしだって何度人魚姫に同情したか分からないわよ。 何かを犠牲にしてまで賭けた想いが報われずに終ってしまうなんて―――哀しすぎるもの。 「……それほど好きだったんでしょ。王子様が」 「うん。それはすごい事だよね。ただ人を好きだって想いだけで、何を失っても構わないって強さを持つ事が出来るなんて」 ぴくっ、と和希の言葉にあたしの心が反応した。 「そういう心の強さも含めて、人魚姫の泳ぐ姿は綺麗なんだろうなあ。あくまでイメージだけどね」 ニコッ、と和希があたしに微笑みかける。 「姉さんの泳ぐ姿は、そんな人魚姫に似てるよ」 ……随分変な慰め方じゃないの。 それに今のあたしは人魚姫なんかじゃないわ。日に焼けるのを怖がって、太陽の下に出るのを嫌がってる―――どっちかと言えば吸血鬼よ。 そんなの……冗談じゃないわよね。 足にかけられていたタオルを払いのけ、ガバッっと起き上がると、あたしは邪魔な帽子とサングラスを取り去った。 ジッパーを降ろし、パーカーも脱ぎ捨てる。こんなの着てたら暑くて走れないもの! 「和希!ちょっと留守番してて!!」 「分かった。けど―――いいの?日に焼け―――」 「そんなの知った事じゃないわよ!」 砂を蹴り、あたしは走り出す。ブッキーを……あたしの王子様を探して。 今してる事は無駄な事かもしれない。もうブッキーはあたしになんて振り向いてくれないかもしれない。この想いは報われずに終わってしまうかもしれない、 でも、伝えなきゃ、って事だけは分かる。今日何度も伝える事が……ううん、今までだって何度も言おうとしてたのに、照れ臭くて伝えられなかった言葉だけは。 あたしはあなたが―――。 あたしの背後から、和希の呟きが聞こえた気がした。 「大丈夫だよ。きっと姉さんの想いは、泡になったりしないから」 新-190へ
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1 「ふふ、そうやってると本当にラブちゃんってお母さんみたいね」 眠っているシフォンを抱いて、揺り籠のように腕を揺らしているあたしに、ブッキーは言った。 ここはあたしの部屋……いつもならせつなと美希たんもいるはずなんだけど、今日はたまたま二人とも 用事があって、珍しくあたし達二人だけ。 「んー、そうかなあ~。あたしからしたらブッキーの方がお母さん役は似合ってると思うけど……」 「え?わ、わたし?」 「だってホラ―――」 チラッとブッキーの胸元に目をやる。 ……ど、どうしたら同い年でここまで差がつくんだろ……。 「ら、ラブちゃんどこ見てるの―――!!」 あたしの視線に気が付いて、顔を真っ赤にして慌てて胸元を押さえるブッキー。 にはは~と誤魔化すように笑って、あたしはある事を閃いた。 「そだ。今日は二人きりなんだし、どーしんに帰って、おままごとでもしない?」 「おままごと?」 「―――そ。美希たんがいたらバカバカしいって言いそうだし、せつなはおままごとって知らないし――― あたし達二人だけだったらいいんじゃないかなって」 「―――おままごとかぁ……そう言えば子供の頃よくやってたわよね―――」 少し遠い目をしながら懐かしむように言うブッキー。 ……にへへ……あたしの考えてる事も知らないで……。 気が変わらないうちに、と少し早口であたしは言う。 「じゃ、決まりね。それじゃあブッキーはお母さん。似合ってるかどうか試してみようよ」 「……ん、いいわよ。じゃあシフォンちゃんが赤ん坊役で、ラブちゃんは―――」 スヤスヤと眠っているシフォンをベビーベッドに寝かせて、あたしはブッキーの隣へと移動する。 「何言ってるの?ブッキー。シフォンじゃまだブッキーがお母さん役に向いてるか発言できないでしょ?」 「え?じゃ、じゃあまさか―――」 正座しているブッキーの膝へと頭を横たえ、彼女の太股を撫でる。 「あたしに決まってるじゃない」 2 「ちょ、ちょっと!!ラブちゃん!!」 さすがに焦ったのか、ブッキーはあたしを起こそうと両手を肩に……。 ふふ~ん、そう来ると思ってた。 「びえぇぇぇ~ん!!」 「わ!!どうしたの!?か、髪の毛でも挟んじゃった!?ご、ごめんなさい!!」 あたしの泣き真似を真に受けて、オロオロするブッキー。 あたしは笑い出すのを堪えながら。 「赤ちゃんなんだから、もっと丁寧に扱わないとダメだよ。今のでマイナス10点」 「え?も、もう始まってるの?!」 「ブー。赤ちゃんに話し掛けるようにもっと優しく。マイナス20点」 「だ、だってどうしたらいいのか……」 慌てながらも、じっと見つめるあたしの視線に気が付いたのか、彼女は無理に微笑んで。 「ま、ママどうしたらいいのか分からないんでちゅ~。ご、ごめんね、ラブちゃん」 「プ……キャッキャッ」 彼女の赤ちゃん言葉が可笑しくて、吹き出しそうになりながらも、あたしも赤ちゃんの真似を続ける。 「あ、よ、喜んでくれたみたいでちゅね……よ、良かったでちゅ……」 恥かしそうに赤ちゃん言葉を喋り続けるブッキー。 あたしは彼女の膝の上に顔を仰向けにさせると、カタコトで喋り始める。 「ママ……お腹ちゅいた……」 「え!?……あ、そ、そうだ。たしかキュアビタンの哺乳瓶が……」 「びえぇぇぇぇぇ~ん」 「え!?え!?こ、今度は何……なんでちゅか~、ラブちゃん?」 再びの泣き真似に、彼女はうろたえ出す。 ―――さて、と。これからだわ。 あたしは身体を起こし、彼女へと抱きついて。 「……ママのおっぱいじゃなきゃ、ヤダ」 「え!!!???ら、ラブちゃん!!!???」 そのまま床へと彼女を押し倒すと、着ているトレーナーを捲くり上げようとする。 「や!いやだ!!!ら、ラブちゃんったら!!やめ―――」 「……あんまり大きい声出すとシフォンが起きるよ。それに、赤ちゃんにはやっぱり母乳でしょ?マイナス 30点」 「で、でもこんなのおままごとじゃな―――」 「はい、赤ちゃん言葉じゃない。マイナス40点」 ま、おままごとじゃないのは百も承知よ。 最初からあたしがやりたかったのはこれ。 「ママのおっぱい、ラブ、飲みたいよ~」 「う……ふ、フリだけ……フリだけでちゅよ……ラブちゃん……」 観念したのか、騒いでシフォンを起こしてしまうのを懸念したのか、彼女は小声で言った。 こうなればシメたもの。あたしは彼女のトレーナーを、胸につかえそうになりながらも、上まで押し上げた。 「……うわぁ~」 正直な感想の声がこれ。 な、何?この大きさ……このボリュームは反則でしょ……。 「……ブッキー、パインじゃなくてメロンの方があってるんじゃ……」 「ば……ばか……」 両手で恥かしそうに顔を覆ってしまうブッキー。 その隙に、あたしはフロントホックになっている彼女のレモンイエローのブラジャーの留め金をパチン、と 弾いて。 「ラ、ラブちゃん!!」 異変に気が付いて、急いで胸を隠そうとするブッキー。 ……でも残念、あたしは彼女の両腕を咄嗟に押さえつける。 ブラの拘束から解かれても、横に垂れたりせず、綺麗に形を保っている胸……そして……。 「……綺麗なピンク色……あ、でも乳首の周りの輪っかは少しだけあたしやせつなより大きいでちゅね」 「や、やだぁ……そんなにじっくり見ないで……は、恥かしいよぅ……」 「へへ……ゴメンね、ママ。じゃ、さっそくいただきま~ちゅ!」 ぱくん、と彼女の乳首を口へと含み、そのままワザと大きな音を立てながら吸う。 「ちゅちゅ……じゅじゅじゅ~……ちゅるうう」 「そ、そんな……や、やらしい音……ん……あ、赤ちゃんは……んん!!」 大きさのみならず、感度まで良好と見えて、ブッキーの声にはすぐに甘い物が混じり始めた。 抵抗も収まってきたとみるや、ブッキーの両腕を押さえていた手を片方放す。 ブッキーは空いた手であたしを突き放すどころか、あたしの頭を優しく抱えてきて。 「ふ、ふぁあ……だ、ダメなんだよ……ホントは……こんなこと……」 あたしは吸ってない乳房へと手を伸ばし、その感触も楽しむように揉み始める。 すごい……何このふわふわ……。 「んんっ!!こんなエッチな赤ちゃ……ん……いな……いよぅ……」 口内にある乳首をねっとりと舌で転がし、時折歯で甘噛みする。 その一方で、人差し指と中指で挟んだ乳首を刺激し、掌全体で胸を揉み解す。 ―――そりゃ、こんな赤ちゃんいないよね。 心の中で苦笑いして、ちょっと目線を上げて彼女の表情を覗き見る。 真っ赤に火照って目を潤ませ、息も絶え絶えなブッキー。その顔は、同性のあたしから見ても妖艶で。 「……んー、いくら吸ってもミルク出ないでちゅね~」 「………あ、当たり前じゃ……ご、ごめんなちゃい……ま、ママを許ちて……」 「やだ~!ママのミルク吸いたいでちゅ~!!」 ……駄々を捏ねる真似をして、ブッキーの固く尖った乳首を強めに噛む。 「ぃ……痛いッ!!ら、ラブちゃ……」 「出ちてくれるまでやめまちぇん!!」 歯に力を込めるたびに彼女は小さな悲鳴を上げる。 おっかしいの~。止められなくなちゃいそう……。 「ぷはっ!!赤ちゃんにおっぱい吸われて、そんな顔するお母さんだっていないよ?マイナス50点」 ちゅぽんっ、と乳首から口を離して、にんまり笑いかけた。 その言葉が羞恥心を刺激したのか、首をふるふると振りながら彼女は否定の言葉を弱々しく口にする。 「ら、ラブちゃんがそんなにママのおっぱいいじるから……でちゅ……い、いけないコ……め!でちゅよ ……」 この期に及んでまだ赤ちゃん言葉は忘れてないんだ。感心感心。っていうか楽しんでない?ブッキー。 「あ~、おなかいっぱいでちゅ。ごちそうさまでちた、ママ」 「あ……はぁ……も、もう終わりでい、いいの……いいんでちゅね……」 ホッとしたような声。でもその中に残念そうな響きがある事を、あたしは聞き逃さなかった。 これなら、まだいけそう。 顔を逸らしてほくそ笑むと、安心しきった様子の彼女に告げる。 「おいちかったでちゅ~。で、ね。ママ……聞きたいことがあるんでちゅけど……」 「ん……?な、何でちゅか?ラブちゃん……」 手を彼女の太股へと移動させて、ゆっくりと撫でさすると、少し汗ばんだ感触が伝わってくる。 この分だときっと―――。 「あのね……赤ちゃんって、どこから生まれてくるんでちゅか?」 「!!」 ぎこちなく微笑んでいた彼女の顔が、一瞬で凍りついた。 3 閉じようとする彼女の足より、あたしが腰をその間に割り込ませる方が早かった。 その付け根へと手を伸ばし、下着の上から秘裂を擦る。 「だ、ダメぇ!!ら、ラブちゃん!!そこだけは絶対にダメぇ!!」 言葉とは裏腹に、彼女のそこはもう充分に潤っている事が下着の上からでも分かる。 あたしは股布の部分の生地を上へと引っ張り、彼女の淫らな部分へと食い込ませた。 「……赤ちゃんの疑問には答えてくれなきゃ……マイナス60点」 そのままブッキーの股間に食い込んだ布をゆっくりと上下させる。 彼女は歯を食いしばって耐えているようだったけど、その足からは込められていた力が徐々に失われて きていた。 この分だと音を上げるのもそう時間は掛からないかな。でもそれじゃつまんないし……。 今度は乳首だけじゃなく、そのボリュームある胸全てに舌を這わせて、からかうように彼女に問う。 「……ね、ママ。あたしがいるって事は、初めてじゃないでちゅよね?じゃあパパは―――美希たん?」 「!!み、美希ちゃんとは―――あ、ああぁッ」 答えようと口を開いた途端、押さえていた喘ぎ声が流れ出す。 そうそう、これこれ。嫌がりながら声を漏らすっていうのが好きなんだ。 「ねー、ちゃんと答えてってば~」 「あぁぁっ!……み、美希ちゃ……ん……とは……こ、こんな……やらしい……事」 「ふぅ~ん……じゃあ確かめてもいいよね?」 「うぁ……え……な、なんて……」 ブッキーが不思議そうにあたしの顔を見つめる。 へへ~。確かめるって言ったらこれしかないでしょ? あたしは布地を動かすのを止めると、その部分を横へとずらした。 「ま、まさか……ら、ラブちゃん……じょ、冗談……だよね……?」 「ブー。また赤ちゃん言葉使えてないよ?マイナス70て~ん」 にっこりと彼女に微笑みかけると、あたしはブッキーの股間の潤滑油で指を充分に濡らして―――。 ぬるんっ!! 「あああぁぁぁぁッ!!!!」 あたしの指を侵入させた途端、彼女は腰を浮かべ、ほとんど悲鳴といってもいい声を上げた。 「――――ほら、やっぱり初めてじゃなかった~。ウソついたから、マイナス80点」 「あ、ああぁ……こ、こんなの……こんなのいやぁ……」 さすがにショックだったのか、ブッキーは涙を滲ませてあたしを押し放そうとしてくる。 だけどダメダメ。 あたしはもう片方の手で彼女の顔を引き寄せる。 「大きな声出すと、シフォンだけじゃなくて近所にも聞こえちゃうよ?」 「あああぁっ!!ひ、ヒドイ……よ……ラブ……ちゃ……」 さすがにこのままだとマズイかな……もうちょっと嫌がる声聞きたかったけど……。 最後まで言わせることなく、あたしは彼女の唇を自分の唇で塞ぐ。 意外にも、というかもうそんな力は残っていないのか、ブッキーはその口内に簡単にあたしの舌を侵入 させた。 「ん―――!!ん―――――!!ん―――……」 ちゅるるっ、ずずっ、れろぉ……。 絡まりあう舌と舌。 お互いの唾液を啜りあうかのような深いキス。 指はブッキーの膣内を優しく、時には激しく動きつづけ、刺激しつづける。 やがてその快楽に負けたのか、それとももはや諦めの境地なのか、ブッキーの身体から完全に力が抜けた。 「―――ふう、これでママも素直になった?」 「ん……はぁん……あはぁ……」 口を放しても、そこからはもう蕩けたような吐息が漏れるばかり。 その表情も緩みきっていて、口をだらしなく半開きにしたまま、気持ちよさそうに目を潤ませている。 「うっわー……やっらしい顔……そんなエッチな顔赤ちゃんに見せるなんて……マイナス90点」 「ふ……ふあぁ……うん……ん……」 「あーもうすっかり出来上がっちゃった?ダメなママでちゅね~。それじゃあ……」 あたしは伸ばしている手の親指の腹で、一番敏感な部分……陰核を刺激する。 「ぁああっ!!あ、ふぁ!!ああぁ!!」 「ホラ、気持ちいいでちゅか?気持ちよかったら一番恥かしい顔、あたしに見せてくれてもいいんでちゅよ~?」 膣内を抉る指のスピードを上げ、陰核を責める親指もその勢いを増す。 舌は固くしこった彼女の乳首を舐め上げ、もう片方の手は食い込むほどに胸を握っていた。 「……ホラ、イッちゃっていいよ!ママ……ホラ――――」 ブッキーの身体が、あたしの言葉に合わせたように弓なりに反る。 「ああああああぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」 一瞬硬直した後、彼女は背中から床へと落ちた。 その身体はビクビクと震え、うっとりとした顔はまだ余韻に浸っているかのよう。 「わは~……派手にイッたね~、ブッキーママ……」 ぬるり、とブッキーの中から指を引き抜く。 すご……ふやけちゃってるじゃない……。 ワザと彼女に見せつけるように、その指を、ぺロリ、と舐める。 「あ……あ……」 「もう恥かしがる元気も無いか~。つまんないの~。それにしても赤ちゃんに負けちゃうなんて……」 あたしはブッキーに微笑みかけた。 「……マイナス100点、ゲットだよ?」 4 あ~面白かった。たまにはこういうのもいいよね。 問題はせつなに告げ口されたらだけど……ま、ブッキーだって美希たんにバレたら困るっしょ。 う~ん、と背伸びをして、ふと喉の渇きを覚える。 確かジュースが冷蔵庫に入ってたっけ。ブッキーも起きたら欲しがるかな。運動した後だし。 「よいしょっと」 身体を起こして、ドアへ向かおうとする。 ―――ガシッ。 「……へ……?」 ぐったりと身を横たえていたハズのブッキーが、いつの間にか身を起こし、あたしの手首を捕まえていた。 「あ、あれ?ブッキー?もう大丈夫なの?あたしジュース持ってくるから……」 「………」 やっばー……やっぱり怒ってるかな……。 無言のブッキーの迫力に押されるあたし。 「……ジュースなんてダメでちゅ。ラブちゃん」 「――――――へ?」 ?マークの浮かんだあたしを、ブッキーは思いきり引っ張る。 そのせいでバランスを失ったあたしは床へと倒れこんだ。 その上に、ブッキーが身体を被せてくる。 「―――ママを放っておいて、勝手にジュース飲むなんて、ダメでちゅ」 「え?い、いやブッキー、もうおままごとは―――んんッ!!」 あたしの言葉を遮るように、彼女はあたしの乳首をギュウッ!と摘み上げた。 「い、痛ッ……ちょっとブッキー!」 非難の声なんて聞いてもいないように、彼女は幼い顔に淫らな微笑を浮かべて。 「ママに対してその言葉遣いはなんでちゅか?ラブちゃん……」 あたしの耳元に顔を寄せ、ブッキーが囁く。 「マイナス10点」 了 避-262は続きですが閲覧警告です。R-21指定になります。
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「……やっぱ、二人だとキツイね……。」 「ベリーとパイン、大丈夫かしら…?」 ピーチとパッションは肩で息をしながら浄化されていくナケワメーケの 残像を眺めていた。 戦闘の最中、ナケワメーケは二つに分裂した。今までになかったパターンだ。 それに混乱している内に、こちらも二対二に分断されてしまった。 不幸中の幸いで分裂した分、敵もパワーダウンしたらしく何とか二人でも 倒す事が出来た。 こちらをベリー達から引き離すために逃げ回るナケワメーケを やっと追い詰めたのは、高層ビルの屋上。 随分遠くまで来てしまった。 もし、他の二人が苦戦しているならアカルンで応援に駆け付けないと……。 そんな事を考えていると、ピーチのリンクルンが鳴った。 「……何だったの?」 しばらく話してリンクルンを仕舞ったピーチにパッションが尋ねる。 「ベリーから。向こうも片付いたみたい。怪我もないってさ。」 「そう、よかった……。」 パッションとピーチは息をついて、何となくその場に背中合わせに座り込んだ。 「!!………すごい…ね。」 ピーチの唐突な感嘆に、何が?と聞き返しかけたパッションだが、 すぐに意味を理解した。 燃えるような夕焼け。秋の太陽が末期の輝きを放つように、世界を深紅に 染め上げている。 こんなに高いところで夕焼けを見るのは初めてかも知れない。 風の音しかしない、普段は閉鎖されているだろう屋上。 顔も体も全身茜色に染め上げられ、まるで世界に二人だけで 取り残されたような気分になる。 同じような気持ちになったのだろうか。 二人はどちらからともなく、唇を重ねる。 背中合わせに座ったまま、半分体を捻り、ちゅっ、ちゅっと音を立て お互いの顔にキスの雨を降らせる。 「……この姿で、こんな事するの初めてね……。」 間近で見るパッションの顔。 淡い色に転じた豊かな髪。夕映えを思わせるような赤みがかった瞳。 せつなの時と顔立ちそのものは変わってないはずなのに、 何時もより凛々しく、引き締まった印象を受ける。 ピーチの心臓が早鐘を打つ。じわり……と、体の奥から溢れ出すものを 止められそうにない。 ピーチはパッションに向き合うように体の角度を変え、 深く、唇を重ね直す。 濡れた音を立てながら甘い口腔内を蹂躙し、指をフリルで縁取られた パッションの衣装と肌の間に這わせる。 「……誰か、来たらどうするの…?」 口でそんな事を言いながらもパッションはピーチの頬に手を添え、 キスの続きをねだる。 「………逃げれば、いいんじゃない?」 それもそうね……。ピーチの言葉にそう答えながら、焦れたのか 今度はパッションの方から舌を絡めてくる。 お互い戦闘の余韻を引きずって高揚しているのを感じる。 「……あんっ…!」 ピーチがパッションの肩から胸まで一気に衣装を引き下ろす。 豊かな胸が夕日の中でもほの白く揺れる。 「…全部は…脱がさないでね……。」 ピーチは答えず、薄桃色の先端をいきなり口に含んだ。 「はあっ…ん!…んっんっ…!」 強く吸い上げ、手のひらで揉み上げながら舌を絡める。 柔らかだった乳首がみるみる固く尖り、舌の上をころころと転がる。 「……お願い…、こっちも……」 触れずにいた、もう片方をパッションは身を捩って差し出す。 ピーチは唇を放し、唾液に濡れた乳首を指で絡めるように揉みながら、 もう片方も同じように舌を這わせ、刺激し始める。 「……っはぁん…んぁ…、あぁっ!」 ピーチの頭を抱え、パッションはあられもない声を上げる。 普段のせつななら快楽に溺れそうになる体を恥じるように、声を殺そうとする。 それでも堪えきれない嬌声を漏らす姿は、それはそれでいとおしく、淫らだが 今のパッションはまた別人のようにピーチの心をかき乱す。 変身するとピーチ自身も自分が高揚し、好戦的になるのを感じる。 それは、情事の時にも言えるのだろうか。 貪欲に快感を貪ろうとするパッションは、戦闘時、真っ先に突入して行く姿に通じるものがあるのかも知れない。 「……パッションばっか、気持ちよくなってズルい…」 あたしにもして……、そうピーチが囁くと、パッションはピーチの太ももの内側を 撫で上げ、膨らんだスカートの中の下着を引き下ろしにかかった。 「わはっ!……ちょっ、いきなりそっち?!」 「……だって、手が上がらないんだもの。」 パッションはピーチが胸の下まで肩口を広げるように下ろした衣装で、 ちょうど上半身を拘束された形になっている。 確かにこれでは肘から上は自由に動かせない。 「……でも、ほら……」 ピーチの秘部はすでに滴るほど潤っており、パッションが指を動かす度に クチュクチュといやらしく水音を立てる。 「もう……充分みたいよ…?」 パッションの潤んだ目が細められ、上目遣いにピーチを窺う。 その挑発するような視線に、ピーチの背筋にゾクゾクと興奮が駆け昇る。 「ひゃうっ!……ひぁんっ……ンンっ!」 卑猥な音を立てて敏感な部分を煽られながらも、ピーチは パッションを膝立ちにさせ、お互い向かい合う。 ピッタリと下肢を覆う黒いタイツは脱がすのは大変そうだ。 途中まで下ろそうかと中に手を忍ばせる。 すると、それは思ったより柔らかくて伸びがいい。 そのまま指を動かしても余り支障はなさそうだ。 「あああっ!……いやぁっ…やぁん…っ!」 そのまま、グイッと手首までタイツの中に突っ込みパッションの弱いところを 攻撃する。 ピーチと同じく、そこは熱くぬめり指が吸い込まれる。 「…パッションだって…すごいよ…、指が蕩けそう……。」 どちらからともなく、お互いの指の動きをシンクロさせる。 濡れて膨れた蕾を擦り上げ、沈めた指で粘膜を引っ掻く。 腰に手を回し、胸を擦り付けるよう体を密着させる。 ピーチの胸の布地越しに固く屹立したお互いの乳首が擦れ合う。 下腹部とはまた違う、ピリピリと痺れるような刺激が体を駆け巡る。 赤く染まった世界の中、戦士の衣装を纏った少女達は、ただ無心に 快楽だけを貪り合う。 向かい合い、抱き合いながら息遣いも荒く舌を、秘肉を絡め合う。 ただひたすら、お互いの体を頂点に導こうとしていた。 「はぁっ…、はあっ、パッション……あたし…もう……っ!」 「っんんん!………私もっ……もう、ダメっ…!」 「……ね、……一緒に…あっ!……あぁっ!」 「あぁああっ!……っっはあ…!……あんっ、んーー!」 少女達は同時に激しく痙攣し、果てた。 息を静めるためにか、軽い口付けを何度も交わし、腰に腕を回したまま その場に崩れ落ちる。 パッションは乱れた姿のまま、無意識の行為なのかピーチの愛液に濡れた 自分の指を舐める。 その姿にピーチは誇り高く穢れ無き女神を、思うさま蹂躙し、凌辱し尽くした ような背徳感を覚え、震える。 達したばかりの体に、また火がつきそうだった。 「ピーチ、下着、上げないの?」 パッションは自分は剥かれた衣装を引き上げながら、 ぼんやりしたピーチをたしなめるよう、声をかける。 まるで『はしたない!』と言わんばかりの口調に、ピーチは少し呆れ返る。 ついさっきまでピーチ以上に激しく乱れていたのは、どこの誰なんだか。 (これは、帰ったら第2ラウンドだね!泣くまで苛めてやるから!) そんなピーチの思惑も知らず、パッションはアカルンを呼び出して いそいそと帰り支度をしている。 そのあと、せつながラブにどんな事をされたかは、また別のお話。
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ラビリンスの首都の中央、最も高い建築物にして権威の象徴。 かつてメビウスの居城として作られた場所。その部屋の一室に三人が集った。 純白の戦闘衣は優れた才能と高い地位を証明していた。 一人は少女。不安そうに窓から外を眺めている。 一人は細身の青年。時を惜しむかのように書物を片手にしている。 一人は体格のいい青年。特殊なダンベルを軽々と持ち上げ肉体強化に余念が無い。 イース・サウラー・ウエスター。旧ラビリンスのエリート幹部にして、新体制の指導者と呼ば れる者達だ。 しかし、そう呼ばれることに、彼らのうち誰一人として満足する者はいなかった。 「おい、イース。本当に良かったのか? 連休なんぞ作って、みんな混乱してるぞ」 「GWと言うんだったね。娯楽の発達している向こうの世界では有効かもしれないが……」 最低限の都市機能を維持して国民全員に休暇を与える。半ば強引にねじ込まれたイースの提案 であった。 生活を管理され自由を与えられてこなかった国民は、自らの行動を自分で決めることに慣れて いない。 突然与えられた七日間の休み。戸惑い、街をあても無く彷徨う者。自宅に閉じこもる者。仕事 の道具の手入れをする者。様々だ。 彼らに共通するもの。それは――戸惑い。 「せめて休暇を過ごすプランか何かでも提案した方がいいんじゃないのか?」 「そうだね、各世界から持ち込んだ遊具や書物もあるはずだよ」 「だめよ。与えられたものをこなすのでは仕事とあまり変わりが無いわ」 ラビリンスの国民は勤勉で忠実で素直だ。これまでもいくつかの娯楽やスポーツなどを提案し てきた。 それらに対しても積極的に取り組み、笑顔も見せるようになってきた。 こちらの望む――通りに……。 素直に喜ぶウエスターとサウラーとは裏腹に、イースの心は晴れなかった。 何か……違和感があった。四ツ葉町で、幸せの街で、実際に過ごしてきた彼女には感じるのだ。 そうじゃない――と。 持ち込んだ文化には、ラブたちの世界で学んだものも含まれていた。ダンス、音楽、ファッシ ョン、テニスや野球などもあった。 それぞれが、その世界において幸せを形作っていたもの。時に娯楽として、時には人生を賭け る夢として。 でも、そうじゃない! それぞれの動作や成果が楽しいわけじゃない。いや、それももちろん 楽しみのひとつではある。でも本当に大事なのはそこじゃない。 ラブのダンスを羨ましいと思っていた。ブッキーに誘われて勇気が沸いた。美希に励まされて 嬉しいと思った。四人で一つになれるのが楽しいと感じた。夢を、目標を持って努力するのが 幸せだと感じた。 ダンスだから楽しかったわけじゃない。それを伝えたい。 「この連休は、国民にとって楽しいものにはならないかもしれない。戸惑い、悩み、不安に駆 られるだけかもしれない。でも、見つけて欲しいの。幸せの――元を」 私たちも自由に過ごしましょう。そう言ってイースは解散を告げた。サウラーとウエスターは まだ納得がいかない様子だった。だが反論するほどでもなく、首を振って諦めた意志を伝えた。 「じゃあ俺は美味い物でも探す旅に出るかな」 彼はいつでも自由だ。何者にも縛られない。全ての国民が彼のようであったらどんなに楽か。 そう思ってすぐに撤回した。縛られない分、縛ることも出来ない。全員がああでは国家として 機能しないだろう。 「くだらないね。僕は面倒なことは御免だ。部屋で本でも読ませてもらうよ」 必要以上にぶっきらぼうな物言い。それは彼の本心では無いからだろう。好きなところに行き たまえ。留守は僕が守ろう。そう言っているように感じられた。 二人に別れを告げてから、イースは街に繰り出した。 街道、住宅地、そして、新設した公園。 人は大勢居た。だけど、それは四ツ葉町のような賑わいと呼べるものではなくて……。 行き場を失い、途方にくれた人々の集まり。そんな感じだった。 何かしてあげたい気持ちに駆られて――思いとどまった。 考えてもらわなければならない。自分が自分の意思で生きるということの本当の意味を。 命あるもの全てが目指す目的――――幸せというものを。 自分の意思で生きること、それは常に選択を続けること。迷い、悩み、後悔し、探し求めるこ と。 私がラブと出会い受け取った幸せの元。その時から私は考え始めた。私にとっての幸せは 何なのか。それを見つけた時にはもう、全てが遅かったけど。 でも、その時から私は、本当の自分を始めることが出来たんだと思う。 それが本当の幸せの元。それをみんなにも見つけて欲しい。 もうみんなを縛るものは――――何もないのだから。 足を棒にして歩き回る。辛い光景でも、しっかり見つめて胸に刻もうと思った。自分がしたこ となのだから。 遠い場所で笑い声が聞こえた。 そっと近寄る。ベンチで話す若い男の人と女の人。困った。何をしていいのかわからないって。 私もそうだって。でも――その会話の中に、確かに笑顔があった。 少し離れた場所で子供の騒ぐ声が聞こえた。 伝えた遊びの一つ。鬼ごっことかくれんぼ。そのどちらでもなくて、組み合わせた新しい遊び を思いついたらしい。 もしラブがここに居たら、あれは缶蹴りって言うんだよって教えてくれただろう。 少しづつではあるけど、この国は、人々は、確かに変わりつつある。 まだ成果はささやかだけど、それは大きな実感としてイースの心を満たしてくれた。 私が、私達がやってきたことは――間違ってはいなかったんだと。 この喜びを伝えたい、そう思った。その相手はサウラーでもウエスターでもなくて……。 久しぶりに帰ってみようかしら……。 イースは、自分にも休みを許してもいいような気持ちになっていた。 「もしもし、ラブ? ずっと連絡も出来なくてごめんなさい。まとまった休みが取れたの。 そちらに帰ってもいいかしら?」 通信設備でリンクルンの電波を強化して連絡を取った。普段は私用で使うことを、自らに禁じ ていた。 「せつなっ! せつななのっ! 今どこにいるの? いつ会えるの?」 早口でまくしたてられる。ほとんどこちらの事が話せなくなって、とにかく今から用意して帰 るとだけ伝えた。 弾む気持ちで自室に戻る。 “スイッチ・オーバー” 久しぶりに、本来の自分の姿に戻った。そう、これが本当の姿。四ツ葉町で生まれ変わった、 ラブや美希やブッキーが親友と呼ぶ少女。おとうさんとおかあさんが娘と愛する女の子。 鏡を見て、念入りに身支度を整える。 四ツ葉町を発った時の洋服を着た。 おとうさんとおかあさんが買ってくれたもの。ラブと一緒に選んだもの。 この世界に持ち込むことの出来た、数少ない宝物だ。 「アカルン」 「キーーー」 嬉しそうにカギの妖精アカルンが飛び出した。クルクルとせつなの周りを飛び回る。 「ごめんなさい、ずっと一人にして。四ツ葉町に戻りたいの、力を貸してくれる?」 「キーーー」 直接、家に転移するのは失礼だと思えた。喜びを感じながら歩いて帰ろうと思った。 「四ツ葉町公園へ」 体が赤い光に包まれる。久しい感覚に身を任せて飛び立った。 ――愛しい人達の住む世界へ。 赤い光が消えて、視界が戻る。 懐かしい匂い。 優しい陽差し。 温かい空気。 胸いっぱいに吸い込んだ。 心が、体が、肌が、全身が喜びに包まれる。 「せつなっ!」 突然、体が後方に弾き飛ばされる。温かくて、懐かしくて、柔らかいものがぶつかってきた。 「せつな……せつな……せつ……なぁ」 かみしめる様に何度も名前を繰り返して呼ぶ。その声がだんだん涙声になって……。 せつなは、しばらく呆然として立ちつくした。 状況がわかると、愛おしさがこみ上げてきた。ラブのことしか考えられなくなって……。 つられるように、涙が零れ落ちた。だから、すぐに言葉を返してあげられなかった。 「おかえり……せつな」 「ただいま……ラブ」 それだけ、言うのが精一杯だった。そのまま互いに腕を回して抱き合った。 しばらくそうしていた。本当はずっと、ずっとそうしていたかった。 「ラブばっかり、ずるいわよ」 「おかえりなさい、せつなちゃん」 聞きなれた声。大好きな声。美希の声だ。ブッキーの声だ。 「おかえりなさい、せっちゃん……」 涙声を隠そうともしない、温かい声。忘れるはずが無い、おかあさんの声。 ラブと交代するように強く強く抱きしめられた。 次はおとうさんと、そして美希とブッキーと、交互に抱き合い再会の喜びを伝えあう。 少し遠巻きにするように、ミユキさんやカオルちゃんや、クラスメイトのみんなや、商店街の 人達まで居た。 せつなは、見られていたことに気がついて顔を真っ赤にした。 みんな――迎えにきてくれたんだ。 愛されていることを実感する。 間違いない、ここはもう一つの故郷。東せつなが生まれた地。その幸せの眠る場所。 きっとしてみせる。ラビリンスを、ここに負けないくらい素敵な国にしてみせる。 優しさと思いやりと夢に、そして愛情と幸せに、満ち溢れた場所にしてみせる。 いつか――必ず。 誓いを新たに、一人一人に向かい合う。心を込めて、喜びと感動を伝える。 ただいま。ラブ、美希、ブッキー。 おとうさん、おかあさん、そして、私を受け入れてくれた全ての人達。 ありがとう。この街とこの世界の全てに――心からの感謝を込めて。
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先を急ぐせつなと、慌てて追いかける祈里。二人はかけ足で目的のマンションへと向う。 そんなに急ぐ必要はないはずだった。強いて言えば直感。言葉にできない胸騒ぎがせつなを駆り立てる。 不意に、せつなの表情が変わる。突然足を止めて、集中するように耳を澄ます。 「どうしたの? せつなちゃん」 「悲鳴が聞こえたわ。ごめんなさい、私は一足先に行くわね」 「えっ? 待って!」 せつなは一言だけ告げると、弾けるような加速で走り出した。 先程とはまるで違う、スプリンターのような全力疾走だ。たちまち引き離されて、姿が小さくなっていく。 祈里には何も聞こえなかったが、せつながそう言うのだから、何かが起きたのは間違いない。 誰の悲鳴かもわからないが、目的地が変わってしまったのだ。とにかく見失わないように、祈里も急いで後を追うことにした。 『クリスマスに愛を込めて(後編)』 せつなが駆けつけたのは、事故から数分後のことだった。近くにいた数人の大人が、少女を歩道に連れ戻し、倒れた犬も運んでくれていた。 せつなは少女が自分の知り合いであることを告げ、後のことを引き受けた。 少女に怪我がないことを確認して、犬の容態を見る。診ることはできない。そんな能力はせつなにはなかった。 身体は温かいが、意識はない。素人目にも、かなりの重態であるように思えた。 「ルルがっ、ルルが死んじゃう! わたしのせいなの! わたしが……」 「落ち着いて、もうすぐ動物の怪我に詳しい人が来るから」 「もう着てるよ、わたしが診てみる」 荒い息を吐きながら、祈里が犬の前で膝を付く。 道路に付いた血の跡と、せつなと少女の様子から、何が起きたのかは想像が付いた。 「祈里お姉ちゃんって、お医者様なの?」 「その勉強をしているところよ。大丈夫、任せて」 どこに隠し持っていたのか、祈里は携帯用の消毒液を噴射して、包帯を手際よく巻いていく。 傷口を覆うというよりも、その周囲をキツく縛るような巻き方だった。 「お姉ちゃん、怪我してるところはそこじゃないよ?」 「ここでいいのよ。まずは出血を止めなきゃ」 「そうなの! こんなにいっぱい血が出てる。どうしよう……」 「それは良いことでもあるの。動物に限らず、生き物はね、生きている間しか血は出ないのよ」 つまり、出血している間は助かる可能性がある。安心させることはできないけど、まだ希望はあると伝えた。 「死なないで、ルル。お姉ちゃん、ルルは助かるの?」 「それはわからないけど……。全力を尽くしてみる」 「きっと、助かるわ」 「えっ、ホント?」 「せつなちゃん、どうして?」 「私たちが、死なせないからよ」 せつなは止血を終えたばかりのルルを、しっかりと抱き上げた。 「家に連れて帰りましょう」 「でも、お医者さんに見せないと!」 「今、私の家に、この世界で一番の名医がいるのよ」 「それは言いすぎだと思うけど、腕は確かよ。でも、それならわたしの家に。手術室が必要になるから」 「わかったわ!」 祈里が携帯で正と尚子に連絡を入れる。自分はせつなと一足先に自宅に戻って、オペの準備をするつもりだった。 少女は走りながら、二人のお姉さんたちを不思議そうに見上げる。 十キロを超える体重のルルを、軽々と抱き上げて走るせつな。一目見ただけで容態を見抜き、応急手当までした祈里。 たった三つか四つ、年上なだけのお姉さんたちなのに、なんて頼もしいのだろう……。ただ泣き喚くだけの自分と、どれだけ違うのだろうと。 祈里とせつなと少女は、山吹動物病院の正面入り口を開けて、そのまま手術室に飛び込んだ。 せつなが手術台にルルを降ろし、そこで彼女の役目は終わりだ。 後は祈里の仕事。二人に少し離れているように指示して、自分は暖房を入れてお湯を沸かす。 ピンク色の手術着に着替えて、器具を殺菌消毒する。そこで、正と尚子が到着した。既に、青色とピンク色の手術着に着替えている。 「祈里、よく頑張った。後は任せなさい」 「ううん、わたしも手伝う」 「わかったわ、よく見ていなさいね」 「あのっ! お医者様、どうか、ルルを助けてください」 「ルルちゃんは、今、精一杯頑張っている。私もこれから頑張る。君は、君にできることをやりなさい」 「わたしに、できることありますか?」 「きっと助かるって、信じてあげること。そして、回復を願って祈ることよ」 「おじさま、おばさま、よろしくお願いします」 せつなは、少女の背中を押すように手術室を後にした。 素人の彼女にも、これからの処置に大変な集中力が必要であることを感じ取れたからだ。 正と尚子と祈里は、もう脇目も振らずに手術に専念していた。 正が、麻酔機を使用して全身麻酔をかける。尚子が口から酸素管を挿入、血管に麻酔管を固定する。続いて、メスを入れる箇所の消毒。祈里が滅菌布の上に器具を並べていく。 有窓布をルルにかけて手術を開始する。同時に、心拍、呼吸数、血圧、血中酸素濃度をモニターに繋いで管理する。 タオル鉗子で固定してメスを入れる。その動きは、美しいほどに正確で、そして、速かった。 少女はせつなに手を引かれて、心配そうに、何度も手術室を振り返りながら待合室に向う。 そこには、たくさんの人の姿があった。 ラブと、その両親の、圭太郎とあゆみ。美希と、その母親のレミ。みんな心配して、パーティーを投げ出して来てくれたのだった。 せつなは、そこに居るみんなに経緯と状況を説明していく。 「ルル、大丈夫だよね? 助かるよね?」 少女は落ち着かない様子で、何度も同じことをせつなに尋ねる。ラブも美希も一緒なのだが、現場に居合わせたのはせつなだけだ。 同じ衝撃と悲しみを共有する者として、どうしても、せつなにべったりと甘えてしまう。 始めは頷いたり、微笑みかけたリするだけだったせつなが、やがて口を開く。 「正おじさまと、尚子おばさまが言ったこと、覚えてる?」 「信じて、祈りなさいって。でも、それって、わたしには何もできないってことよね?」 「違うわ! 信じることと祈ることは、そんな意味じゃないの」 「ちがう……意味って?」 「かつて私は、ラブの信じる心で救われた。そして、みんなの祈りは世界を救ったのよ」 「どういうこと? わからないよ、お姉ちゃん」 「信じて、祈ることは、相手を想い、応援することよ。それは本当の力になるわ。それに――――」 「それに?」 「クリスマスってね、特別な日なんですって。神様が見ているらしいの」 「それ……お母さんにも言われたことあるわ。お姉ちゃんは、神様を信じているの?」 「信じたいと、思っているわ」 「わたしも……もう一度信じたい。それでルルが助かるのなら!」 少女は目を閉じて手を合わせる。ルルの傷付いた姿を思い浮かべ、次に元気になった姿を思い描く。 クリスマスには、奇跡が起こるって信じたい。神様は、本当に見ているって信じたい。良い子にしていたら、神様の使いである―――― サンタクロースが、欲しいものを届けてくれるって信じたい。 少女が、今、一番欲しいもの。 それは――――元気になったルルなのだから。 しばらくして、少女は目を開く。 最初に目に飛び込んだのは、同じように目を閉じて祈る、せつなの姿だった。 そして、振り返って目を見開く。 ラブ、美希、圭太郎、あゆみ、レミまでもが、全員目を閉じて、深い祈りを捧げていた。 衝撃を覚える。自分は何を見ていたのだろうと。 ルルの怪我のことで頭がいっぱいで、見舞いに駆けつけてくれたみんなに、お礼すら満足に言ってなかった。 自己紹介だってせつなに任せっきりで、軽く頭を下げただけだった。 初めて顔を合わせる大人も三人いる。自分と知り合わなければ、今頃楽しくパーティーをしていたはずの人たちが、ここに六人も居るのだ。 嬉しくて、申し訳なくて、胸がいっぱいになる。 祈りを終えたみんなに、涙を浮かべながら、一人一人お礼を言った。 「来てくれて、ありがとう。大切なパーティーを台無しにしちゃって、ごめんなさい」 「大丈夫だよ。そんなの、いつでもやれるじゃない」 「みんなで、笑顔になれるパーティーでなきゃね」 「ちゃんと、ルルちゃんのプレゼントも用意してあるのよ」 「あ~あ、アタシももう少し若かったら、プレゼントもらえるのにな~」 「ママは、若返っても良い子じゃないから、やっぱりもらえないんじゃない?」 「美希ちゃんひどい! そんなこと言う子こそ、悪い子なんだから」 「くすっ、クスクス。お姉ちゃんたち、ありがとう」 少女が始めて笑顔を見せる。その時、一つ目の奇跡が起きた。 部屋の窓から、白い粒がいくつか見えた。 窓を開けて見上げる。始めは、錯覚かと思うほど少なくて。 やがて、はっきりとした姿で夜空を彩っていく。 寒い日にだけ咲くという、氷で創られた天上の花。 とても小さくて、どこまでも繊細で、ただ一つとして同じ形のない、 それは――――神様からの贈り物。 「すごいね。ホワイトクリスマスなんて、いったい何年ぶりだろう?」 「綺麗……。ルルと出会った、クリスマスイブの夜以来よ」 そして起こる、二つ目の奇跡。 正と尚子と祈里が手術室から出てくる。 「お医者様! ルルはっ? ルルはどうなりました?」 「もう心配いらないよ。今は麻酔で眠っているが、しばらくしたら目が覚めるだろう」 「また、走れるくらいにまで回復すると思うけど、一週間は入院が必要ね」 「良かったね」 「うん! ありがとう!!」 手を触れなければ、近くで見ても平気らしい。少女は手術室で眠るルルの様子を伺う。 先程のように倒れているのではなくて、規則正しい呼吸で静かに眠っている。そんな、安らいだ表情に見えた。 少女は、改めて正と尚子にお礼を言う。この人たちもまた、祈里の両親。何もなければ、今頃パーティーを楽しんでいたはずだった。 「私のせいで、せっかくのクリスマスを、パーティーを台無しにしちゃって、ごめんなさい」 「なんの。ルルの命が救えて、君の笑顔も見られたんだ。これ以上素敵なクリスマスなんてないじゃないか」 正は、そう言って優しく微笑む。 初めて、まじまじと正の顔を見つめた少女が、不思議そうな顔で一言つぶやいた。 「サンタクロース……」 近くで見ていて、ようやく聞こえるか聞こえないかの、小さなつぶやきを聞き取った祈里とせつなが吹き出した。 正はサンタクロースに似ている。それは、クリスマスが近づくと必ずネタにされる笑い話だったからだ。 その笑いの意味に気が付いて、みんな一斉に吹き出した。尚子もレミも、あゆみや圭太郎まで。 楽しげな笑い声は、幸せな日常が戻ったことを告げているようで―――― 一人だけ笑わなかった少女が、もう一度つぶやいた。 「やっぱり居たんだ。ありがとう、サンタクロースの――――みんな」 ルルは正と尚子が交代で診るからと、一同は桃園家に戻ってパーティーのやり直しをすることになった。 もちろん、少女も一緒に。 その夜は、少女にとって、ルルと出会った晩と同じくらいに、忘れられない大切なクリスマスになった。 「それじゃ、ルルのことお願いします。学校終わってから、毎日寄りますから」 「ちゃんと勉強するのよ?」 「この子は、家まで僕とあゆみとラブとせっちゃんで送っていきます」 「おやすみなさい、みなさん。今日はありがとうございました。メリークリスマス!」 『メリークリスマス!』 家に帰ると、母親が玄関まで迎えに来てくれた。送ってくれた桃園家の人たちに、丁寧にお礼を言って別れる。 少女が用意しておいた夕ご飯は、既に食べ終えていた。 代わりに、クリスマスケーキとシャンパンがテーブルに乗っている。 「お母さん、遅くなってごめんなさい。待っててくれたの?」 「帰ったばかりだし、連絡もあったから平気よ。ケーキを買ってきたの、一口くらいはまだ入るわよね?」 「うんっ!!」 母親は、クリスマスプレゼントを娘に手渡す。早くからサンタクロースの夢を壊して、ごめんなさいと謝った。 「ううん。わたし、わかったの。ちゃんとサンタさんはいるんだって」 「どういうこと?」 「お母さんの中にも、みんなの中にも。わたしや、ルルの中にだってね」 「そうね。サンタクロースは、相手の幸せを願う心の中に居るのかもね」 「心の中にも、よ。お空にだって、きっといると思うの。でも、これからは、わたしがお母さんのサンタさんになってあげる」 そして、少女は用意していた包みを母親に手渡す。貯めていたお小遣いで買った、いくつかの毛糸。見よう見まねで編んだ、へたくそなマフラーだった。 母親は、そのマフラーを握りしめて小刻みに震えだした。そして、娘を強く抱きしめる。 「メリークリスマス、お母さん」 「メリークリスマス、私の小さなサンタさん」 命はみんな繋がっていて。愛することによって、繋がっていって……。 誰もが、誰かのサンタクロース。 世界中に溢れる愛を見守るように、雪はその夜が開けるまで静かに降り続けた。 翌朝の景色を、銀世界に変えるために。 それは、天上からの贈り物。 メリークリスマス。 ~~ fin ~~
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プリキュアオールスターズではリズムゲームの後、キメ技ゲームが始まる。 Part6現在メロディ・リズムの技はバグらしき状態になっている(詳細) シリーズ 使用キャラ 技名 ドキドキ!プリキュア 相田マナ パンチ(♯01のみ)マイ・スイートハート(♯01PS01・S02使用時、♯02以降)プリキュア・ハートシュート(ラブハートアローキュアラビーズ及びラブハートアローキュアラビーズカード使用時) 菱川六花 パンチ(♯01のみ)トゥインクルダイヤモンド(♯01PS01・S02使用時、♯02以降)プリキュア・ダイヤモンドシャワー(ラブハートアローキュアラビーズ及びラブハートアローキュアラビーズカード使用時) 四葉ありす パンチ(♯01のみ)ロゼッタウォール(♯01PS01・S02使用時、♯02以降)プリキュア・ロゼッタリフレクション(ラブハートアローキュアラビーズ及びラブハートアローキュアラビーズカード使用時) 剣崎真琴 パンチ(♯01のみ)ホーリーソード(♯01PS01・S02使用時、♯02以降)プリキュア・スパークルソード(ラブハートアローキュアラビーズ及びラブハートアローキュアラビーズカード使用時) 円亜久里(♯4から登場) パンチエースショット(変身キュアラビーズか変身キュアラビーズカードおよび攻撃キュアラビーズか攻撃キュアラビーズカード使用時) 5人共通 プリキュア・ラブリーストレートフラッシュ(マジカルラブリーパッドキュアラビーズ及びマジカルラブリーパッドキュアラビーズカード使用時) スマイルプリキュア! 星空みゆき プリキュア・ハッピーシャワーウルトラキュアハッピー変身(PASMプロモ12・スマイル06S03使用時/キャンディが登場してウルトラキュアハッピーが変身のお礼をした後、キャンディと共に飛び立つ)♯01以降現在は見られない 日野あかね プリキュア・サニーファイヤー 黄瀬やよい プリキュア・ピースサンダー(劇中とは違い、電撃を地面伝いに発射する) 緑川なお プリキュア・マーチシュート 青木れいか プリキュア・ビューティブリザード 5人共通 プリキュア・レインボーバースト(プリンセスフォームカード使用時/劇中とは違い5頭のペガサスに跨って突進する)♯01以降現在は見られない スイートプリキュア♪ 北条響 プリキュア・ミュージックロンドPart6現在は見られないプリキュア・ミラクルハートアルペジオ(Part5PSミューズ・Sメロディ&リズム使用時、Part6以降) 南野奏 プリキュア・ミュージックロンドプリキュア・ファンタスティックピアチェーレ(Part5PSミューズ・Sメロディ&リズム使用時、Part6以降) 響&奏 プリキュア・ミュージックロンド・スーパーカルテット(Part6PSハミィ・Part6メロディ&リズム使用時)♯01以降現在は見られない 黒川エレン ビートソニックプリキュア・ハートフルビートロック(ビートのキメ技チェンジ使用時)♯01以降現在は見られない 調辺アコ プリキュア・スパークリングシャワー ハートキャッチプリキュア! 花咲つぼみ プリキュア・ピンクフォルテウェイブ 来海えりか プリキュア・ブルーフォルテウェイブ 明堂院いつき プリキュア・ゴールドフォルテバースト 月影ゆり プリキュア・フローラルパワー・フォルテッシモ フレッシュプリキュア! 桃園ラブ プリキュア・ラブサンシャインフレッシュ 蒼乃美希 プリキュア・エスポワールシャワーフレッシュ 山吹祈里 プリキュア・ヒーリングプレアーフレッシュ 東せつな プリキュア・ハピネスハリケーン Yes!プリキュア5GoGo! 夢原のぞみ プリキュア・シューティングスター 夏木りん プリキュア・ファイヤーストライク 春日野うらら プリキュア・プリズムチェーン 秋元こまち プリキュア・エメラルドソーサー 水無月かれん プリキュア・サファイアアロー 美々野くるみ ミルキィローズ・ブリザード ふたりはプリキュア Sprash☆Star 日向咲 プリキュア・ツイン・ストリーム・スプラッシュ 美翔舞 ふたりはプリキュア MaxHeart 美墨なぎさ プリキュア・マーブルスクリュー・マックス・スパーク 雪城ほのか 九条ひかり ルミナス・ハーティエル・アンクション
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登録日:2012/02/08(水) 03 05 24 更新日:2023/12/13 Wed 18 47 49NEW! 所要時間:約 3 分で読めます ▽タグ一覧 TOKYO MX まさかの映画上映 プリキュア 再放送 再開希望→後に復活 枠変更→元に戻る 正しい判断だった 順番がカオス 「今日は早く帰れたし、テレビでも見るかー」 ポチ 「1234、プリキュア5!」 「(゚Д゚)」 TOKYO MXのプリキュア再放送とは、夕方の16 30に設けられたプリキュアの再放送枠である。 【歴史】 それは2010年の4月、yes!プリキュア5から始まった。 月曜~金曜の夕方16 30~17 00に、これまで幼女と大きいお友達を喜ばせてきた、 かつてのプリキュア達の勇姿が甦ったのである(MX視聴可能地域限定)。 BS11でも再放送はあった(*1)ものの、「地上波で」「毎日」観れるという事で幼女とプリオタは大歓喜した。 【放送順】 第一弾がプリキュア5だった事からもわかるように放送順は、 Yes!プリキュア5 →〃GoGo →フレッシュプリキュア! →ふたりはプリキュア Splash☆Star →ふたりはプリキュアMax Heart →ふたりはプリキュア →ハートキャッチプリキュア! →SplasStar →5(終) とかなりカオスであり、 2作目が終わったら次が1作目(ガンダムで例えるとZZの後にZ、SEED DESTINYの後にSEEDを放送するようなもの) なぜか短い間隔で二回放送されたSS などの現象が起きた。 まぁあまり贅沢を言ってはいけない。(*2) 【移転事件と本当の終了…?】 2011年2月にはTOKYO MXが地デジに移行する一環として、放送時間こそ変わらないものの、 地デジ専用のMX第2チャンネルに変更された事があった(ちなみに当時は無印を放送中)。 しかしデジアナ変換で見ている世帯などにとっては放送終了にも等しい行為であり、抗議があったのか1ヶ月後には元に戻った。 そして2012年の2月。 「さて次は何が再放送になるかな、ハトプリの二回目かしら」 [新]妖怪人間ベム 「なん…だと…?」 プリキュア再放送枠はこうして終了を告げた。 ちなみに最後に放送されたのは、奇しくも最初に放送されたyes!プリキュア5であった。 PROT「なぜプリキュア(の再放送は終わり)なんだ」 TKMX「日常とも(再放送打ち切りに)しました」 【劇場版、そして復活】 と、思っていたら まさかの三夜連続オールスターズDX上映。 ( ゚д゚) (つд⊂) ( ゚д゚) 超待遇の三夜連続であった。 そして3/21、ついに元の放送枠でプリキュア再放送が復活。しかし何故かマックスハートからである。基準がよくわからん……。 この調子でスイートも再放送していただきたい。無事放送されました。 なお、以下の通り2枠に増えたため、2日連続で楽しめるようになった。 ちなみに首都圏の地方局で再放送があまり放映されてない作品はハピプリからHUGっとまでの作品のみ。(*3) この調子で残りの作品も放送していただきたいところ。 2023年現在は以下の作品が放送中 デリシャスパーティ・プリキュア 毎週水曜日19 30-20 00 ドキドキ!プリキュア(*4) 毎週木曜日19 34-20 00 追記・修正はプリキュアの為に早めの帰宅をしてからお願いします。 △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] ワンセグでプリキュアを録画して帰りの電車で観るのが俺の日課になった -- 名無しさん (2013-08-18 21 20 07) 今年に入ってスイプリとスマプリを再放送しているMXテレビはある意味いい仕事してんなー。 -- 名無しさん (2013-10-24 12 35 36) 明日でSSが終わり、あさってからは5。そういえば去年の春から秋に入るまでもSS→5の流れだったような… -- 名無しさん (2014-08-05 18 56 15) おかげでこのwikiに項目があるロボット回が見れた -- 名無しさん (2014-08-05 21 23 55) 無印よりMHを多目にやるのは何故…おかげでMHを先に見てしまったよ -- 名無しさん (2014-08-05 21 58 51) MHの方がルミナスまで出てるからキャラが把握しやすいから…? でも5と比べて5gogoは多いわけでもないような -- 名無しさん (2014-08-05 23 59 09) でも、ドリームさんが一番かわいいのは不変である -- 名無しさん (2014-09-16 09 24 32) 東京MXは、ドラゴンボールでもZとGTを何度も繰り返すという奇行を続けている(超や改はともかく、無印は……) -- 名無しさん (2016-08-19 19 58 40) SEEDの再放送とかも何回もやってなかったか -- 名無しさん (2020-03-23 11 15 47) 現在は毎週水曜19時半で今はスタプリが再放送中。 -- 名無しさん (2021-01-31 11 02 55) ヒープリを再放送で見てコロナで休止してた時期の話を翌週で見れた時はいろんな感情がこみ上げた。 -- 名無しさん (2022-12-09 01 23 58) デジモン02も第1話からではなく何故か途中の回から、最終回迎えた後に第1話からという変則的な放送になってる -- 名無しさん (2023-11-01 04 08 20) 水曜枠もせっかくならもっと古いの放送してほしいかな… -- 名無しさん (2023-11-26 16 40 56) 名前 コメント
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「あ、蒼乃先輩だ」 「綺麗だよねー。恋人とかいないのかな」 「彼氏いるって噂だけど、実際どうなんだろ」 「それがさ、この間先輩が誰もいない教室で電話越しに相手に『好き』って言ってるの聞いた子がいるみたい。顔赤かったし絶対彼氏だって」 「うっそ。先輩クールなイメージなのに。恋人の前じゃ違うの?」 「えー。やっぱ恋人いるのかなぁ。ショックー」 「気になるよね。どんな人なのかな。誰か見たりしてないの?」 「見た人いないらしい。ほとんど他校の女友達と一緒だって。でも友達もすっごい美人らしいよ」 「私見たよー。ピンク色の髪の人でしょ。なんかちょーお似合いだった」 「お似合いって、女同士じゃん」 「あはは、まあねー。でも先輩なら女好きでもいいかも」 「二年の女の人にも美希さん好きな人いるみたいだよ」 「えー、マジ?」 「あ、美希先輩携帯見ながらドアにぶつかった」 「おでこおさえてる!大丈夫かなぁ」 「なんか最近先輩ぬけてるよね」 「前よりよくない?親しみやすいし。てか涙目ちょー可愛い。私も好きになっちゃったかも」 「はは、ファンクラブ作っちゃう?」 「いいかもそれー」 「あたし入るー」 「私もー」 ――――――― from:パッション [題名]なし [本文] シチュエーションってすごく大事だと思う from:美希 [題名]なし [本文] 何の話? from:パッション [題名]Re: [本文] ブルンと話がついたの 美希を気持ちよくさせるためにはお互いがんばりましょうって from:美希 [題名]意味がわからない [本文] ブルンと何話したの!? from:パッション [題名]Re:意味がわからない [本文] 美希はムッツリだから派手に行きましょうって 今夜は動物です from:美希 [題名]なし [本文] ブルンを悪用しないで・・・ from:パッション [題名]Re: [本文] 何がいい? from:美希 [題名]なし [本文] ・・・ネコ END ~おまけ~